変身

ボス 「クックック。ほんの雑魚かと侮っていたら結構やるではないか。まさかこの我輩と対等に渡り合うとはな!」


吉川 「当たり前だ! 人間の思いは無限だ! 決してお前のようなやつに屈することはない!」


ボス 「フフッ、威勢の良いことだ。だがここで残念なお知らせがある。吾輩の本気の姿を見せてやろう。ハァーッ!」


吉川 「な、なんだと!? 変身するのか! ここからさらに……ッ!?」


ボス 「フゥ、どうだ? さっきまでの状態と比べたら力は10倍、そしてこの皮膚は何者も傷つけることなどできない!」


吉川 「うわーっ! ダッ……ダッハッハッハ! やべぇー!」


ボス 「何だその反応は?」


吉川 「すげぇ、面白っ! なに、その見た目!」


ボス 「……何を言ってる」


吉川 「もうダメ。笑いすぎて窒息死する。そういう戦術かよ……」


ボス 「そういう戦術ではない! ちょっと待てよ。一回笑うの止めて」


吉川 「ヒィ~、無理。ダメだ。アッハッッハ」


ボス 「本当に! ちょっとぉ!」


吉川 「えー。これ、笑わそうとしてるんでしょ?」


ボス 「そんな余裕などないぞ、恐怖ですくみあがってるだろう」


吉川 「違うんだ。マジでこの見た目? 面白すぎるだろ! ダメだ、笑いすぎて力が入らない」


ボス 「そう言う意味で勝ってるんじゃない。戦闘力が単純に上回ってるんだ」


吉川 「え、ちょっと。写真撮っていい? うわー、これはひどいな」


ボス 「ひどいってなんだよ。強いんだよ! 強さに対してお前はまずリアクションすべきだろ!」


吉川 「いや、もう勝ちじゃん。こんな面白い見た目なら強いとか関係なくどこにでても大爆笑でしょ」


ボス 「大爆笑を狙ってやってるんじゃないんだよ! ちょっと本当にムカついてきたな」


吉川 「ちょっとネットにアップするわ。もう一人で抱えるにはもったいなすぎる案件」


ボス 「勝手なことするなよ! その、よくわからないけど! なんかやめろ。戦うために変身したんだから。それ以外のことしないで!」


吉川 「あ、なんかセンシティブな画像って忠告でたわ」


ボス 「いいだろ! 別に誰かに見せるためじゃないんだから! お前が余計なことしなきゃ、どんな姿だって問題ないんだよ!」


吉川 「センシティブだって自覚あった? 鏡見て、やべぇな吾輩の姿、みたいな?」


ボス 「鏡とかで別に確認しないから。これはあくまで戦闘用だから」


吉川 「いや、見た方がいいって。絶対ウケるから」


ボス 「自分の姿を見てウケないだろ! 百歩譲ってウケるような見た目なら静かに傷つくだけだよ!」


吉川 「うわ、すごいアクセスされてる。大人気だぞ! いいねが大量についてる」


ボス 「ほら! いいんじゃないか! いいねがつくってことはみんな褒めてるんだろ」


吉川 「ある意味ね」


ボス 「ある意味ってなんだよ! いいから戦えよ!」


吉川 「うわっ! なんか晒されてる。【悲報】ラスボスの変身後、完全に事故だった。だって」


ボス 「事故ってなんだよ! 見た目に対して使う言葉じゃないだろ、事故って! 絶対悪い意味で言ってるだろ」


吉川 「お、なんかエロいって言ってる人もいるぞ。よかったな?」


ボス 「別によくないよ! 狙ってないから! 全然嬉しくないし、なんでそんな評価されてるんだよ。そいつの頭一回病院で見てもらえよ!」


吉川 「そんな面白い変身残してるとか、もう無敵じゃん!」


ボス 「違うから。お前の指し示してる無敵は、なんか多分こっちが狙ってるのと違うやつ!」


吉川 「うっわ! もうパロディ動画でてきてる! すごいよ、これ! 女が服を脱ぐとお前がドーンてでてくるやつ!」


ボス 「たとえ吾輩がどんな行いをしていたとしても、容姿をこういう風に嘲笑うのは絶対に良くないだろ!」


吉川 「見たか、人間の思いは無限だ!」


ボス 「本当に滅んだほうがよくないか、人間?」



暗転

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