飲み込まれるな!

藤村 「ダメだ! 吉川! 耐えるんだ、その力に飲み込まれてはいけない!」


吉川 「グアアアアア!」


藤村 「たとえ悪魔の力が宿っていようと、お前の心は人間のはずだ! 一緒に戦ってきた俺たちの仲間だ!」


吉川 「グ……ワァ……」


藤村 「そうだ! 確かにお前を仲間っていうのはやめようって言ってたやつもいたけども! 俺はギリ仲間だと思ってる派だ!」


吉川 「グワアアア!」


藤村 「一部だから! お前が仲間じゃないし、人間ですらないって言ってる人間はごく一部だから! あとお前だけ弁当のランクは下だったけども。それは知ってた? 知らないなら知らないでいいんだ! 今言ったことは忘れてくれ!」


吉川 「グギャアアア!」


藤村 「そこはもうしょうがない! 俺もまぁ、お前と同ランクの弁当ってなるとモチベーション下がるし。仲間だとは思ってるけどな、そこはやっぱりきちんと区別しておきたいと思ったから」


吉川 「ガアアア!」


藤村 「どうした!? 吉川! お前はそんな悪魔に飲み込まれるようなやつじゃないだろ! いいところもあったじゃないか! ほら、あの……。まぁ、具体的にエピソードは思い浮かばないけど、いいところはあったと思うよ?」


吉川 「グギャグギャアア!」


藤村 「ダメだ、このままでは飲み込まれる。やっぱり飲み込まれるんじゃないかと思ってたけどな」


吉川 「グ……グガッ!」


藤村 「あれ? 持ち直した? いや、無理だろ。吉川だもん。期待するだけバカだよな」


吉川 「ふ、ふじ……」


藤村 「え、まじかよ。あれだから! さっきの、あれ。笹咲が言ってたやつ! あいつが無理だって言ってた。俺はそんなことないって信じてたけど! 俺は信じてるよ!」


吉川 「グガアアア!」


藤村 「なんだよ、やっぱダメじゃん。ビビらせんなよ、クソが!」


吉川 「ふじ……おま……」


藤村 「吉川ー! まだ正気を! 俺は信じてるから。だけどできればもうどっちに転ぶかはっきりして欲しい! 変に頑張らなくていいから。ダメでも俺たちがなんとかするから」


吉川 「グアアアア!」


藤村 「いいよ! その調子! それでも悪魔になるわけね? いいのね、悪魔ってことで。それならそれで俺たちも予定通りやるから」


吉川 「よ、よていど……」


藤村 「まだかよ! いい加減しつこい! もうそこはいいから。お前も十分やっただろ。あんまりそこのところ伸ばされてもみんな飽きちゃうから」


吉川 「ガアアアア!」


藤村 「そう! きたきたきた! クッ、吉川! お前のことは忘れない! だけどこの悲しみを乗り越えて、俺たちはお前を倒す!」


吉川 「ふ……じ……」


藤村 「もうなんだよぉ! おい、悪魔! ちゃんとやれよ! いつまでそんな吉川みたいな雑魚に手間取ってるんだよ! 吉川程度とっとと飲み込めよ!」


吉川 「て……いど……」


藤村 「正直、こんなにもたつくならもっと序盤でなんとかしておくべきだったな。あいつの存在自体が無駄なのにさぁ」


吉川 「グ……ァ……」


藤村 「いける? いけそう? もう悪魔なの? いいのね、悪魔ってことで。ここにきて違うなんてことになると面倒が増えるだけなんだから」


吉川 「ふ……ふじ……」


藤村 「おいー! 悪魔よ! なんだよ、その体たらくは! もうこうなったら俺たちで吉川を抑えておくから! そのすきにチャッチャと乗っ取ってくれよ。いいか?」


吉川 「グガア……」


藤村 「その調子! フレー! フレー! 悪魔! 吉川のクズなんてぶち殺しちまえ!」


吉川 「ダァッ! はぁ……はぁ……。藤村!」


藤村 「あ、え……。吉川! 今のはあれだから。そういう作戦だから」


吉川 「グハッ……グハッ!」


藤村 「ビビらせんなよぉ、悪魔よぉ!」


吉川 「違う、今のはむせただけ」


藤村 「信じてたぞ!」


吉川 「もう無理だろ」



暗転

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