占い

藤村 「え、占いが好きなんだ?」


吉川 「結構好きかも。雑誌とかで目にするとついつい読んじゃうんだよね」


藤村 「雑誌って星座占いとか?」


吉川 「そうそう。ほら、たまに見るとさ」


藤村 「全人類を12種のタイプに分けて予測するっていう占いでしょ? メキシコの赤ちゃんもフィンランドのおじいさんもごちゃまぜにして、同じ運勢だと決めつける」


吉川 「いや、うん。確かにそうだけどな。そう言われると無茶な気がするけど、でもほら、それほど深刻に受け止めずにいいことが書いてあれば気分が良くなる程度の影響ならいいんじゃない?」


藤村 「俺は結構詳しいんだけど、占いって昔は亀の甲羅だったり鹿の骨だったり、そういうものの壊れ具合でやってたんだよね」


吉川 「古代の人でしょ? 聞いたことはある」


藤村 「個人の場合は念が染み付いた何かに相が表れると思われてた。中にはコーヒーを飲んだあとのカップの汚れ具合で占うコーヒー占いなんてのもあったんだよ」


吉川 「手相や顔相なんかは、なんか説得力あるもんな」


藤村 「それで考えると、個人の未来を占う方法としてやっぱりその人の身体に聞くっていうのがいいと思うんだよ。たとえば銃で撃って、その時にできた銃創から健康状態を占うとか」


吉川 「健康状態は悪いと思うよ? 最悪だと思う。なぜなら銃で撃たれてるから」


藤村 「一応内臓とかは避けて撃つことになってるから」


吉川 「一応とかじゃなくて、撃つなよ。人を銃で撃ったらダメなんだよ」


藤村 「だったらなんで銃なんて存在するの?」


吉川 「根源的な問いかけをするなよ。それはそうかもしれないけど、その矛盾と人類は向き合っていかなきゃいけないんだから」


藤村 「この銃創からすると、結石ができてるかもしれませんね。とか」


吉川 「そういうのはもう医者でやれよ。占いに頼るなよ。現代医学を舐めるな?」


藤村 「ついでに結石も撃ち抜いておきましょうか?」


吉川 「治療を兼ねるなよ。治療って言わないけどな、それは。銃で撃つのは暴行だ」


藤村 「あとこまめに運動をして野菜を多めに食べるようにしないと」


吉川 「そんなことより銃で撃たれない生活を心がけろよ。スラムかよ」


藤村 「銃が嫌だったら背中に刃物で傷をつけてそこから相を読み取るとかね」


吉川 「なんでダメージが大きい占いしかないの? ちょっといい気分と引き換える代償がデカい」


藤村 「さすがに身体の前面だと跡が気になるし」


吉川 「背中がズタズタなのも気にして! 視界に入らなきゃOKって野生動物みたいな雑さで処理するなよ」


藤村 「でも剣士じゃなければ恥ずかしくないから」


吉川 「背中の傷は剣士の恥だから? その主張掲げてるのゾロしかいないよ! そもそも恥ずかしいかそうじゃないかの観点から注意してるわけじゃないからね」


藤村 「ちょっと血がドロドロなのでラッキー野菜は血液サラサラ効果のある玉ねぎ! と運勢がわかる」


吉川 「だからそれは医療でやってくれよ! そんな野蛮に血を流さなくても血液ドロドロかどうかは診断できるだろ」


藤村 「あと顔面を思いっきり殴って折れた歯の本数から運勢がわかる」


吉川 「そんなことされるほど悪運なやついなくない?」


藤村 「臼歯はラッキーなのでもう一発」


吉川 「ラッキーという言葉の意味知ってる? そもそも何発もいけないだろ。歯にも限りがあるし」


藤村 「確かに。これ以上はやらない方がいいな」


吉川 「そういう占いはないから! 単なる暴行だから!」


藤村 「ほら、殴った拳の骨折具合から占いは控えた方がいいって出てる」


吉川 「そっちも占ってたんだ」



暗転

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