北風と太陽

藤村 「北風と太陽って話あるじゃない?」


吉川 「旅人の上着を脱がせようと競争するやつだっけ?」


藤村 「そう、それ! あれ思うんだけどさ」


吉川 「うん?」


藤村 「北風と太陽ってスケール違いすぎない?」


吉川 「スケール?」


藤村 「だって太陽は太陽だよ? 太陽系の恒星の。それに対して北風ってさ、太陽系の惑星の一つである地球の風にすぎないのに。なに勝負できると思ってるの?」


吉川 「おい、北風に厳しいな」


藤村 「だってそうだろ? 普通なら口を利くことすらはばかられるような立場の違いよ? それを割とタメ口でいってるじゃない?」


吉川 「タメ口かどうかは物語の語り口によると思うけど『太陽さん、ひと勝負いいでヤンスか?』みたいな下っ端キャラでも嫌だろ」


藤村 「だからそもそも直でいくなっていうの。最低でも上司である地球の許可を得て、地球から話を通してもらうくらいが筋じゃないの?」


吉川 「あれはあくまで人間の視点から見た感じだからさ。人間から見たら風も太陽も空になんとなくある存在なわけじゃない?」


藤村 「でも格が違いすぎるだろ。風なんて見えもしないのに」


吉川 「そうだけどさ」


藤村 「まず太陽からしたら勝負する以前に『てか、お前誰だよ?』ってなるじゃん?」


吉川 「擬人化された時点で結構同列まできてるんじゃないの?」


藤村 「そう考えると、北風ごときにちゃんと話を聞いて勝負を受ける太陽さんの徳の高さを感じるよな。学ぶことが多い」


吉川 「そんなところから学べる物語じゃないと思うけど」


藤村 「だって地球という惑星の風だよ? それが直で話そうなんて、普通は土星の輪あたりが止めるだろ。『おい、お前相手わかってるのか? 太陽さんだぞ』って」


吉川 「取り巻きが嫌な感じのやつらだな。太陽さんは性格いいのに」


藤村 「いやいや、お前程度が太陽さんに対して直でいくなって太陽系みんなで総スカンだよ。ハレー彗星も遠くから『オイオイオイ! 俺が行くまで待ってろ!』くらいの勢いだよ」


吉川 「北風のせいで宇宙がワチャワチャになってるじゃん」


藤村 「でもって案の定北風のやつはダサい結果に終わるわけじゃん?」


吉川 「ダサい結果って言ってやるなよ。あいつはあいつで頑張ったんだよ」


藤村 「それがダサいんだよ。それに比べて太陽さんの圧倒的な実力ときたら」


吉川 「すごい太陽を持ち上げるな。そう言う話ではあるけど」


藤村 「俺ね、この話の教訓は現代のSNS時代の弊害だと思うんだよ」


吉川 「絶対違う」


藤村 「ネットだとさ、一流の著名人に何一つ満足に成し遂げたことのないクズが話しかけられるじゃない? 本当に北風と太陽だよ」


吉川 「その例を北風と太陽って例えるの人類史上初かもしれないよ」


藤村 「イキって俺でも勝てそうなんて勝負を挑んでさ、てんで話にならないの。それで炎上して北風は垢消して逃亡」


吉川 「垢消して逃亡は物語にないけどな。あくまでお前の二次創作だから」


藤村 「序列で言えばトップ中のトップに対して底辺の中でも誰も知らないようなやつが噛み付いてさ。対応してあげるだけ太陽さんは大人だよ」


吉川 「お前がしばらくネットから離れた方がよくない? なんか考え方が怖いよ」


藤村 「でも北風みたいなやつのやり方が広まるとまたさらにおかしなのが出てくるんだよ。南風とか西風がワンチャン知名度上げられるぞって」


吉川 「そんな風と太陽の対決シリーズみたいな続編はないけど」


藤村 「そんなド底辺とトップが馴れ合うような物語に夢を求めてる辺りがしょうもないんだよな」


吉川 「そこに夢を求めてあの話読んでる人いないよ」


藤村 「やってることは釣りバカ日誌と一緒なんだから」


吉川 「また釣りバカ日誌!?」



暗転


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