四属性

老師 「魔法は修行によりその力は底しれぬものとなる。そして魔法の力を剣に宿すこともできるのじゃ。この魔法の系統は四つの属性から成り立つ」


吉川 「はい、老師!」


老師 「まずは火の属性、この力を極めればあらゆるものを燃やし尽くすことができる」


吉川 「火の属性」


老師 「そして水の属性、あらゆる形に変化することができ、すべてのものを包み込むことができる」


吉川 「水の属性」


老師 「さらに風の属性、強き風は邪悪なものを吹き飛ばし、また極めれば空を自由に舞うことすら可能となる」


吉川 「風の属性」


老師 「最後にローションの属性、これはもうすごいヌルヌルになる」


吉川 「ろ、老師?」


老師 「この四つの属性を極めれば、どんな敵であろうとも打ち勝つことができるのじゃ」


吉川 「すみません。最後の、ローションでいいんですか?」


老師 「ローションの属性!」


吉川 「そんな重厚な言い方しても、ローションでしょ」


老師 「この世のすべてをヌルヌルにする!」


吉川 「ヌルヌルにするからなんなの? って気がするんですけど」


老師 「どんな恐るべき敵ですらヌルヌルになるのじゃ!」


吉川 「いや、だから。なったから、何なのか」


老師 「では修行を始めよう」


吉川 「いやいや。ローション? 四つの属性の中の一つがローションでいいんですか?」


老師 「ローションの属性!」


吉川 「言い方! 威厳のある言い方で誤魔化してません? だって水の属性の中に含まれません? ローション」


老師 「水はサラサラしてるのじゃ」


吉川 「そうかも知れないけど。極めることによってそうじゃない使い方とかできませんかね?」


老師 「ふぉっふぉっふぉ。何も知らぬ若造が珍アイデアを抜かしよる」


吉川 「珍アイデアだった? ローションを属性に組み込もうって方が珍アイデアだと思うけども」


老師 「そうしたら三属性になってしまうではないか」


吉川 「いや、でも他にあるでしょ。もっと、木の属性とか、土の属性とか、金の属性とか」


老師 「土? 土なんてどうするのじゃ? 汚れるだけじゃ」


吉川 「いや、土を直でって意味じゃなくて。土的なパワーを拡大解釈して上手く運用するような」


老師 「そんなのではまったくヌルヌルにはならん!」


吉川 「そうですけど。ヌルヌルにはなりませんが、ヌルヌルにしなくてもよくないですか?」


老師 「ヌチョヌチョにもなるんじゃ」


吉川 「言い表し方だけでしょ。ヌルヌルとヌチョヌチョの状態はそんなに変わってない」


老師 「ぬっぷし」


吉川 「だから言い表し方。なんでそのヌルヌル方面に全幅の信頼をおいてるのかもわからない」


老師 「土ではドロドロじゃ」


吉川 「それはそうだけども。ドロドロがダメでヌルヌルがいい理屈もあんまりよくわからないんですが」


老師 「清潔感じゃ」


吉川 「攻撃でしょ? 魔法の攻撃で清潔感そんなに気にしますか?」


老師 「そういうことをすぐ言うからダメなんじゃ。プライドの高さから変化を拒み、努力をしない理由を探し出して言い訳をする。まずは一歩でもいいから努力をすることがモテへの第一歩なんじゃ」


吉川 「何の話? モテへの第一歩を踏み出すために老師に会いに来たわけじゃないけど」


老師 「清潔感はないよりもあるに越したことがないじゃろ!」


吉川 「その理屈はわからないでもないけど、今持ち出す理屈ではないですよね? 魔法の話なのに」


老師 「そういうこと言ってるからモテないのじゃ」


吉川 「余計なお世話でしょ。こっちは魔法の修行に来てるのにモテるモテないの修行なら別にするよ!」


老師 「よいのか? この魔法を極めれば、火の属性により灼熱の空間でじっとりと汗をかき、さらに水ですばやく冷却し、火照った身体を外気浴でゆったりとリラックスできるのじゃ! しかし最も大事なのが整ったあとの保湿なのじゃ」


吉川 「整ってんじゃねえよ!」



暗転

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