クイズ

藤村 「さて、ここでクイズです。これは何でしょう?」


吉川 「え? なに? どれ?」


藤村 「はい。これは何でしょう!?」


吉川 「これってどれ? 何を指してるの?」


藤村 「さぁ、わからないかな?」


吉川 「問題がわからないんだよ。クイズ出すの初めてか? どれのことだよ」


藤村 「どれのことでしょうか?」


吉川 「いや、こっちが聞いてるんだよ! どれをお前が聞くなよ。問題変わってるじゃん。まずどれがこれなのか特定するところから始めてくれよ


藤村 「もうわからないかな?」


吉川 「もうっていうか、違う。最初からわかってないんだよ。問題が! 普通もっと丁寧に言うだろ。答えの時点でブレを作れよ。問題でブレを作るな。クイズ童貞なのかよ」


藤村 「どっちでしょうか?」


吉川 「何がだよ! 何と何のどっちだよ? これとかどれとか、もうなにもわからない。手がかりがない」


藤村 「クイズ童貞でしょうか?」


吉川 「そこなの? その今までなかった概念が急にクイズとして立ち上がったの? はじめからそれのクイズだった?」


藤村 「どうでしょうか?」


吉川 「どうじゃないよ。こっちが聞いてるのにクイズ形式で返すなよ。なにも返ってきてないんだよ、さっきから」


藤村 「ヒントでしょうか?」


吉川 「でしょうかってなんだよ! ヒントならヒントをくれよ」


藤村 「ヒントとは何でしょうか?」


吉川 「それは何を聞いてるの? ヒントという言葉の概念? ヒント自体を聞いてるの?」


藤村 「いいでしょうか?」


吉川 「よくないよ! 何に対して急にいいかどうか聞いたんだよ」


藤村 「もう一回やり直していいでしょうか?」


吉川 「それを聞いてたの? それはいいよ。最初からやり直してよ。ちゃんと! クイズにして!」


藤村 「さて、これの名前は何でしょうか?」


吉川 「うんうん。名称に絞ったね! 一歩前進した。ただスタート地点の5キロ手前にいるんだ。一歩じゃ足りない! これって何!?」


藤村 「これの名称は日本ではなんと言われているでしょうか?」


吉川 「はいはい。いいよー、もう一歩進んだ。以前5キロ手前だけども。その歩みでいつになったらちゃんとしたクイズになるのかな? 結構最初の段階で日本以外のこと想定してなかったから何も絞れてないけど、絞ろうっていう意志は感じられたのでその点は評価する」


藤村 「これの名称は日本では呼ばれてますか?」


吉川 「知らないよ! 何を指してるのかわかってないんだから。後退したよ! 日本で呼ばれてるのにして。そこに自信を持ってからクイズ形式にしてくれ」


藤村 「ではアメリカでは?」


吉川 「わかってないものに対してひねりを加えるなよ! ひねられてるのかどうかもわからないから」


藤村 「では、これの一番問題になりそうなのはなんでしょうか?」


吉川 「問題を丸投げしてきたの? え、こっちで問題から考えるの? 斬新なクイズだな」


藤村 「さて、本当に斬新なんでしょうか?」


吉川 「何も主体性を持ってないんだな。あのさ、そもそもちゃんと答えを用意してるわけ? 聞いてるだけでそっちに答えが確定してないならクイズではないよ?」


藤村 「この世に完全に確定した答えなどあるのでしょうか?」


吉川 「急に哲学になったな。クイズじゃなかったの? その問いに対して俺が答えるの? もうクイズ形式ではなくなるけど」


藤村 「どうすればいいでしょうか?」


吉川 「それはもう人生相談だな。この状況でそんな問いかけをされても正しい答えを導き出すことができるとは思えない」


藤村 「残り時間はあとわずかでしょうか?」


吉川 「だからそういうのはそっちの責任で決めろよ。なんでこっちに投げてくるんだよ。好きにこっちがしちゃダメだろ」


藤村 「ブー!」


吉川 「あ、不正解ってこと? 時間切れ?」


藤村 「ブ~?」


吉川 「もう言葉で意思の疎通すらできなくなっちゃったのか?」



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る