吉川 「ダメだ。ここでもう終わってしまうのか!」


声  「……から……ほし……」


吉川 「な、何だこの声は!?」


声  「……力が……欲しい……」


吉川 「力が欲しいか、だと!? 欲しい! 今こそ俺に力を!」


声  「……力が……欲しいな」


吉川 「欲しいな? 欲しいなって言ったの?」


声  「……マジで力が欲しいなぁ」


吉川 「お前の願望かよ! なんなんだよ! この忙しい時に!」


声  「……力が欲しいよな?」


吉川 「共感を求めるタイプのやつ? そりゃ欲しいけど。何なんだよ。何の何だよ!? どの立場でお前は訴えかけてきてるんだよ」


声  「……なん……知り……」


吉川 「なに!? もっとはっきり言って! なんか最初だけ濁さないで!」


声  「なんなのか……知りたい……」


吉川 「何なのか知りたいよ! それも心に訴えかける形式でやりと知りなきゃいけないの? 何、このシステム?」


声  「……何なのか知りたいよね」


吉川 「お前もかよ! お前は把握してろよ! 自分のことだろ! お前がわからないとなるともう誰もわからない状態になるんだよ!」


声  「……誰が……知ってるのかなぁ?」


吉川 「知らないよ! 少なくとも俺じゃないよ! なんでこの差し迫った時にお前の身の上のことを相談されなきゃいけないの? そういうのは自力でなんとかしてくれよ」


声  「……自力で……やりたいか?」


吉川 「いや、お前は力をくれよ! 力をくれる担当の人でしょ? 俺は自力じゃない方がいいんだから。状況を見て言ってくれない?」


声  「……わかる。こっちもそう思ってた」


吉川 「共感は別に求めてないんだって。なに? 友だちになろうとしてるの? 力をくれるかどうか意外の役割あるの?」


声  「力は欲しいけど……でもあんまりそういうのに頼りすぎるのもよくないよね」


吉川 「説教してくるじゃん。こんな時に。確かにそうかも知れないけど、この状況でそんなこと言われても全然同意できない」


声  「……やっぱり、毎日コツコツやっていくのが大事なんだよ」


吉川 「わかってるよ! 正論言うなよ! そういうのはある程度自分自身と向き合う余裕のある時の言葉だろ! 今、危機が迫ってるところでいわれても毎日がもうなくなっちゃうかもしれないんだよ!」


声  「……でもこの年になって思うと……いつだって迷わず挑戦すべきだ……今が人生の中で一番若いんだから」


吉川 「おじさん! おじさんがシミジミと語りがちな! そのくせ自分は別に今何かを始めようともしないおじさん! 若者に言って満足するだけのおじさん!」


声  「……こんな風になっちゃダメだぞ」


吉川 「切ないこと言うなよ、おじさん! どういうこと? 力は? 力をくれるシステムはもう終わったの?」


声  「……俺も若い頃は力が欲しいとか思ったよ」


吉川 「もういいよ、じじい! おじさんの泣き言は生産性がないんだよ。若者の貴重な時間を奪っておいてなんら人生に寄与しないんだよ」


声  「……何だその口の利き方は……ったく、最近の若いもんは」


吉川 「じじいの逆ギレ! この世で一番醜いものの一つ。もういいよ、帰ってくれよ」


声  「……いいのか? 力は」


吉川 「いいよ。どうせくれる気もないんだろ。相手してる暇ないんだよ」


声  「……そんなにいうならあげるけど。態度が気に食わないなぁ」


吉川 「すみませんねぇ! いただけますか? 力!」


声  「(¥500)これで力の足しにしてください」


吉川 「スパチャのシステム! コメント勢だったの?」



暗転

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