雑学

藤村 「さすが雑学を良く知ってるなぁ」


吉川 「なんか好きなんだよね。そういうの」


藤村 「他にもある? 雑なやつ」


吉川 「雑な?」


藤村 「雑学みたいな。雑なやつ」


吉川 「別に雑なやつじゃないよ。雑学は。まぁ確かに分類上アカデミックなものではない知識ではあるんだけども、でもいうなれば知識に貴賤はないわけじゃん? どのような知識であっても蔑まれるようなものではないから」


藤村 「ふぅん。で、他には?」


吉川 「雑だなぁ。人の扱いが雑だな。相手の気持ちとか考えないの?」


藤村 「でも所詮雑学だから」


吉川 「それは雑学いう側が謙って言うんならいいけどさ、あんまりバカにしたもんじゃないよ」


藤村 「そうなんだ。なんか雑ってイメージからして、もう本当にクソの役にも立たないやつだと思ってたから」


吉川 「そういうのもあるけどさ。でも言い方が悪いな。傷つくでしょ、それは。雑学言った側が」


藤村 「そう? でも雑学って言いたいだけのものでしょ? こっちが求めてないのに勝手に聞かされるやつ。言ったやつがなんか誇らしげだからこっちもありがたがるようなリアクションを強制されるという」


吉川 「しないでいいよ! 別に強制してないから! そんな風に思われてた? もう言わないけどな!」


藤村 「いや、大丈夫。可哀想だから聞くよ」


吉川 「可哀想だからって思ってたの!? こいつ雑学披露するくらいしか取り柄がないやつだからって」


藤村 「……取り柄?」


吉川 「取り柄ですらないんだ! 雑学は! なに? じゃあ何?」


藤村 「雑学いう人って聞かなきゃ聞かないで機嫌悪くなるからさ、こっちとしては人間関係を円滑にするためのコストみたいなものだと思って」


吉川 「そんな扱いだったんだ。面白がってると思ってたのに」


藤村 「面白がらないと不機嫌になるだろ? 雑学言いたがりなやつって、なんか自分の気持ちしか考えてないでしょ。自分の思いどおりにならない世界に対してストレスを感じるじゃん。あれ、これって雑学か?」


吉川 「それは雑学じゃないよ! 偏見っていうんだよ! そんなことはない!」


藤村 「まぁ、機嫌悪くなるってのも色々あってさ、勝手に落ち込んでこっちがケアしなきゃいけなくなるし。どう転んでも面倒くさいことになるじゃん。だから雑学言われたら面白がった方がいいっていうのは処世術関連の雑学みたいな」


吉川 「雑学にするなよ! そんな風に思ってたの? それはさすがに傷つくわ」


藤村 「ほら、メンタルが弱い。それが困るんだよ。雑とかいうくせに自分のことだけ繊細」


吉川 「雑学というかあるあるみたいになってる!」


藤村 「で、プライドだけ高くて頭良く見られたいっていうさ」


吉川 「言い過ぎじゃない? 俺はそうだとしても雑学言う人全体に対して言うの良くないよ」


藤村 「勉強できなかったやつが自尊心を保持するために逃避するバカの駆け込み寺が雑学でしょ?」


吉川 「そんなさ! よくそんな急所を一撃で仕留めるようなこと言えるな!」


藤村 「それで雑なのいける?」


吉川 「ちなみにドラクエのどくばりは八分の一の確率で急所を刺す」


藤村 「おぉー! 出るねぇ」


吉川 「褒められてる気もしないし、なんか言ってしまった自分が嫌いになる」


藤村 「気分はいい?」


吉川 「そう聞かれて良いって答えるやついないでしょ」


藤村 「もう大丈夫? 終わった?」


吉川 「すごい嫌々感出してくるじゃん。そっちから振ったくせに! 別に俺だって言いたくていったわけじゃないよ! もう二度と言わないから」


藤村 「いや、別にちょっとくらいなら聞くから。ドヤ顔もしていいよ」


吉川 「しねえよ! ったく、人の雑学を何だと思ってるんだ!」


藤村 「雑音」



暗転


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