時代

藤村 「す、すみません! 今は西暦何年ですか!?」


吉川 「え? 西暦? あぁ、そうか。2024年ですね」


藤村 「2024年だって!? ということは、平成何年だ?」


吉川 「平成? 今は令和ですよ」


藤村 「昭和?」


吉川 「令和! 令和! 平成が終わって令和になってもう6年」


藤村 「信じられない! こんな時代に来てしまうなんて!」


吉川 「ひょっとして、タイムトラベラー?」


藤村 「どうやらそのようです。一体何が起こってるんだ!?」


吉川 「どの時代からやってきたんですか?」


藤村 「過去です。こんな未来からしたら遥かに原始的だと思います」


吉川 「そんな過去から……」


藤村 「2024年かぁ、さぞかし進んでるんでしょうね。あなたの時代から見たら我々の時代なんて噴飯ものですよ」


吉川 「確かにここ何十年で技術も生活も結構変わってますから」


藤村 「私の時代では、まだ自動車は人間が運転してるんです」


吉川 「あぁ、うん。まぁ、変わってるっちゃ変わってるけど。そんなにこの時代も全部変わってるわけでもなく。まだ割と多くというか、ほとんど人間がやってます」


藤村 「レストランでも人間が料理を運んでるんですよ!? まるで人権なんてないんだ!」


吉川 「いや、人権はそれでもあるんじゃない? 確かにこの時代は配膳ロボット増えてますけど。いますよ、運んでる人間」


藤村 「服装だってそうだ! そんな柄、私の時代ではダサいですよ!」


吉川 「それは個人のあれじゃない? 私のこの服装がこの時代をすべて代表してるわけでもないし」


藤村 「でもその服装をダサいと思ってないんでしょ? 信じられない。価値観も180度変わってる!」


吉川 「まぁ、昔の人からしたらそうかもしれないけど。あんまり気持ちいい言われ方ではないな」


藤村 「その手に持ってる板なんですか?」


吉川 「あー! これ、知れないか。そりゃそうだわな。これスマホです」


藤村 「スマホ!? これがスマホ!? え、なんていう?」


吉川 「これはGalaxyの……」


藤村 「信じられない! 我々の時代はみんなiPhoneでしたよ!」


吉川 「それは個人個人違うだろ! なにそれ、いただろ。iPhoneある時代だったらGalaxyも! なに? 割と最近の時代から来たの?」


藤村 「それは一体何を食べてるんですか?」


吉川 「え、お餅だけど」


藤村 「餅!? 餅ってあの大昔のあの食べ物? 未だに餅を食べてるの?」


吉川 「未だにっていうか、正月だから」


藤村 「信じられない。我々の時代ではもうほとんど米主体に移行してるというのに」


吉川 「こっちもそうだよ! 餅主体じゃないよ! 今だけ!」


藤村 「じゃあきっと、モチトッツォとか流行ってるんでしょうね」


吉川 「それはないよ! 餅というよりマリトッツォの方がなんかなくなっちゃったから。そのなんでもトッツォにする流れ一瞬しかなかった」


藤村 「じゃあこの時代に流行ってる、その餅を使った一発ギャグを見せてください」


吉川 「餅を使った!? 限定で? いや、知らないけどそういうのは」


藤村 「一発ギャグがない!? この時代には絶滅してしまったのか」


吉川 「それはあるけど! あるけど餅限定はない。あと単純に恥ずかしくてやりたくない」


藤村 「あれはまだいます? あの、河童っていう川辺に住む妖怪みたいな」


吉川 「いますっていうか、いるの? どの時代ならいたとかあるの? いるのかいないのかわからないっていうのが全時代の河童感じゃないの?」


藤村 「じゃあまだギリいるのかな?」


吉川 「知らない。どっちともいえない。時代と関係ないことだから。だいたいあなたどうやってきたの?」


藤村 「それがまったく心当たりがないんです。ただ普通に寝ただけなのに」


吉川 「この時代に?」


藤村 「ええ。寝た時は確か2023年だったはずなんですが……」



暗転

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