少ない

吉川 「そうなんだよ。お菓子の容量とかもさ、ちょっとずつ減ってるの!」


藤村 「不景気だもんなぁ。知らない間に減ってるんだよね。ちょっとずつ減ってるから意外と気づかないもんで、知った時にはかなり減らされてたりするんだよ」


吉川 「だからと言って値上げをしたらしたで売上に響くから企業側も踏み出せないんだろうね」


藤村 「やっぱり『高くなった!』って印象は強烈だからな。最近は色々と物価も上がってきてショックじゃない?」


吉川 「そうそう! 体感では一回スーパーに買物に行くと今までの1.5倍くらいかかる感じ」


藤村 「消費者がそれで購買欲をなくすのを企業側は八十も承知だからな」


吉川 「……ん? なんて?」


藤村 「購買欲がなくなるじゃない?」


吉川 「その後」


藤村 「八十も承知」


吉川 「百じゃない!? 百も承知なんじゃない?」


藤村 「あぁ~。ここもちょっとずつ減ってる」


吉川 「減ってるの? え? 不景気で百も承知が八十になったの!?」


藤村 「なってるね。俺も今気づいた。九十くらいの時に気づいておくべきだった」


吉川 「減ってるってどういうこと? 言い間違えたんじゃなくて?」


藤村 「減ってるわ。だって八十も承知の方がもはやしっくりくるもん」


吉川 「概念が減ってきてるの? すごいな」


藤村 「でも景気だっていつまでも悪いわけじゃないと希望を見出さないとね。何事も六転び七起きだし」


吉川 「減ってる! それも!」


藤村 「本当だ! 前まで八転びだったのに!」


吉川 「いやいや? 八転びの時代は知らない。俺が知ってるの七転びだったよ?」


藤村 「あ、あれはバブルの頃か」


吉川 「バブルの時増えてたの!? 景気に左右されて?」


藤村 「みんな転んでたからね」


吉川 「そんなことあるんだ! 増えてるのも気づかなかった。小さい頃に覚えたままだ」


藤村 「双子の魂七十までってやつか」


吉川 「減ってる! ダブルで減ってる! 前は3×100で300あったのに、もう2×70で140で半分以下になってる!」


藤村 「少子化の影響もあるよ、これは」


吉川 「景気だけじゃなくて? 三つ子が双子になるのは少子化とかじゃない気もするんだけど」


藤村 「まぁ、子供を持つのはね。今の時代大変だよ。望まない人も増えてるし、だからと言ってそれを非難することもできないしさ。九人七色だから」


吉川 「減ってるけど、減り方にばらつきがあるな! 十人十色の頃はそれぞれ違ってたはずなのに七色になったら三人は一緒の色ってことになっちゃう!」


藤村 「ほら、みんな同じ安いところで買うから色も被っちゃうんだよ」


吉川 「そこも? 景気の影響でファッション被るの? むしろ昔に比べたら多様性増してた気がしたけど」


藤村 「選択肢は増えても結局人って値頃なところに落ち着いちゃうからさ、気がついたら同じようなものになっちゃう」


吉川 「そうなの? それっぽい理屈言ってくるな」


藤村 「でもだからこそ景気が悪いからって人が荒むのはよくないと思うんだよ。そういう時こそ助け合わなきゃ。人ってのはさ、零期零会なんだから」


吉川 「一度も会ってない! 何その言葉! 何も言ってない! 無の言葉じゃん。まったく会ったこともない他人のことを言ってるの?」


藤村 「最近は人のつながりはネットだから。あんまり会ったりしないんじゃない?」


吉川 「そうなの?」


藤村 「あとほら、コロナの影響。あれでもう人は会わなくなったから」


吉川 「景気だけじゃないんだ。社会情勢に影響されてついに人は零期零会に」


藤村 「社会問題だって経済の話だって簡単にはいかないよ。なにか一つを解決すれば大丈夫ってものじゃないし、複雑に絡み合った問題なんだから。それを安易に解決できるようなことを言うネットの論客なんかには気をつけないと」


吉川 「確かに。メリットしかない政策なんてあったら政治家もやってるはずだもんな」


藤村 「そう。一兎を追うものは65535兎を得るからさ」


吉川 「ファミコンのバグ技みたいになってる!?」



暗転

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