そういうのじゃない

藤村 「最近、腰がヤバくてさ」


吉川 「デスクワークだろ? ずっと同じ姿勢でいるのがまずいんだって」


藤村 「だからこの間マッサージに行ったんだよ。そういうのじゃないマッサージ」


吉川 「あぁ、うん。言わなくてもわかるけどな。なんだよ、そういうのじゃない方って。普通のマッサージだろ」


藤村 「そうそう。で、そういうのじゃないマッサージだったから、なんか骨盤? とかなんかが歪んでるとか言われてさ。ちょっと楽にはなったんだけど根本的には無理らしくて」


吉川 「結構ひどくなっちゃってたんだな」


藤村 「だから今度はそういうのじゃないクリニックに行ったんだよ」


吉川 「普通の病院だろ? 整形外科の」


藤村 「うん。だからそういうのじゃない方のクリニック」


吉川 「病院は全部そういうのなんだよ。逆にそういうのじゃないくせにクリニックを名乗ってるのは本当の医療機関ではないよ」


藤村 「そういうのじゃない証拠に、なんと看護師さんが男」


吉川 「いるよ! 割と多いよ」


藤村 「意味なくない? 看護師さんが男って」


吉川 「意味はあるだろ! 力だってあるし。病院なんだから」


藤村 「それでそういうのじゃないレントゲンを撮ってもらったんだけどさ」


吉川 「むしろそういうレントゲンってなんだよ! レントゲンに関してはオルタナティブはないだろ!」


藤村 「そういうのじゃないくせに、出てきたのが無修正画像だったから驚いたよ。全部丸見えの」


吉川 「レントゲンだからな! 当たり前だよ。ちょっとこの腫瘍の部分がヤバいので修正入れておきましたっていうレントゲンはないんだよ」


藤村 「ただ背骨とか骨盤とかっていうのは手術とかできないから、こまめに運動するしかないですねって言われて。そういうのじゃない運動」


吉川 「それはわかるけど、それに関してはそういう運動だって運動は運動なんだからいいだろ」


藤村 「そういうってどういう?」


吉川 「お前が言ったんだろうが! なんでうっかり乗ったら言及されるんだよ! お前の考えてる通りのことだよ!」


藤村 「だからそういうのじゃないヨガ教室を探してるんだけど、そんなヨガ教室ってあるのかな?」


吉川 「あるだろ! 風評被害も甚だしいよ! 純粋にヨガを広めようとしてるインストラクターに謝れよ!」


藤村 「でもその習ってる人たちってのも運動で性欲を発散させようという御婦人なわけでしょ?」


吉川 「そういう人もいるかもしれないけど! でもほとんどの人がヨガを楽しんでるんだよ!」


藤村 「ヨガだよ?」


吉川 「ヨガに対する偏見がひどすぎる!」


藤村 「あと器具を使った特殊なの。えーと、名前からしてそういうやつ」


吉川 「ティラピスな。普通の名称だろ、ティラピスは! なにがどうそういうやつなんだよ! そういうのって言われるまでそういうことを想像したことないよ!」


藤村 「そう、そのティラピス! さすがにティラピスは非合法だろうから探さないけど」


吉川 「合法だよ! ティラピスは普通の運動! なんか待合室で待たされるタイプの施設じゃないんだよ!」


藤村 「結局筋肉がこわばっちゃってるわけだから、一番いいのはそういうのじゃないストレッチをすることなんだよね」


吉川 「ストレッチなんてものは、そういう風に見えがちだけどそういうのじゃないんだよ!」


藤村 「軟体モノの女優とかはすごいのがいるからね」


吉川 「どんなジャンル見てるんだよ! 知らないよ、そんなの」


藤村 「元バレリーナとかのやつ。見たことない形でやるから」


吉川 「それは参考にする資料じゃないんだよ! もっと普通にストレッチしろよ! そういうのじゃないストレッチなんてものはないんだよ!」


藤村 「だから一人エッチしてさ」


吉川 「それはそういうのだよ!」



暗転

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