ライバル

吉川 「キャンプって初めてしたけど楽しいなぁ」


藤村 「ガッハッハッハ! その程度で楽しいだとは片腹痛いわ!」


吉川 「え。誰ですか?」


藤村 「ワイはキャンプ四天王の一人、力の藤村や!」


吉川 「キャンプ四天王。そんなのがあるんだ」


藤村 「他にも力と知性の小林、力と技の沼田、あと笹咲がおる!」


吉川 「力と。その面子だと力の藤村はなんか足りない気すらしてくる。あと最後の人は何が得意なの?」


藤村 「キャンプや!」


吉川 「いや、キャンプはみんなでしょ? キャンプが得意なのは前提として力とかあるんじゃないの?」


藤村 「ガッハッハ。人にはそれぞれ苦手なことだってあるんや!」


吉川 「苦手なやついるの? そんなやつキャンプ四天王名乗らないでよ。そもそもなんで選ばれた四天王なんだよ」


藤村 「なんで? なんでってどういうこと?」


吉川 「四天王として選出されたんでしょ? 数多のキャンパーの中から」


藤村 「初めから四人やで?」


吉川 「ただの友達じゃねえか! 四天王を名乗るなら選ばれろよ」


藤村 「この世にキャンプ好きな人なんて四人しかいない」


吉川 「いるだろ! 他にもいるよ! 今はメチャクチャいるよ! 生きてる世界が狭すぎる!」


藤村 「お前が五人目や」


吉川 「入れられたの!? キャンプ一回しかしたことないのに!」


藤村 「沼田はまだやったことないで?」


吉川 「じゃあキャンプ四天王じゃないだろ。ただの集まりだろ」


藤村 「でも力と技があるんや!」


吉川 「他の四天王にしろよ。得意ななにかの。誰も得意じゃないんじゃないの?」


藤村 「笹咲はキャンプが得意なんや!」


吉川 「だけどそいつは何のあれでもないじゃん! 力とか知識とかないじゃん」


藤村 「力と知識だけじゃなくモラルもないで」


吉川 「最低じゃないか! そんなやつキャンプに来るなよ。今問題視されてるんだよ、キャンパーのモラルは」


藤村 「靴下も履いてない」


吉川 「それは別に勝手にしろよ! まぁ、キャンプは足元冷え込むから絶対に履いたほうがいいけど」


藤村 「だからこそお前に目をつけた! ワイらの中で初めてモラルを持つものとして加わってくれ!」


吉川 「全員なかったのかよ! 誰か持ってろよモラルは。そんなならず者集団がキャンプしてたら山賊だろ」


藤村 「でも一応みんなワクチンは打ってるし感染症対策はきちんとしてるで?」


吉川 「チグハグだな! いいことだけど。やらないよりはずっといいけど、それ以前の問題で褒める気にはならないよ」


藤村 「キャンプは命がけのレジャーや! モラルなんかよりも大事なことがある!」


吉川 「そんなにないだろ。優先しろよモラルを」


藤村 「テントの下にゴツゴツした石があって、なんかもう寝るに寝られず最悪になることに比べたらモラルなんて大したことじゃない!」


吉川 「そんなところにテント張るのが悪いんだろ。キャンプ得意な笹咲に意見を聞けよ! 結構基礎的なところで躓いてるじゃねえか」


藤村 「笹咲は着いたらすぐ近くにキャンプ女子がいないか物色しに行っちゃうから」


吉川 「モラル! 本当にモラルがない! 最悪だよ。キャンプに来るなよ。何が四天王だよ。キャンプする資格ないよ」


藤村 「でも力はあるで!」


吉川 「力のみで解決できる現場なんて現代にはないんだよ! 原始人の優先順位だろ」


藤村 「なんかテントの紐の結び目がメチャクチャ固くなっててどうしようもなくなってた時はどうするんだよ?」


吉川 「限定的すぎるだろ。その一瞬のハイライトのために力のみのやつ連れてくる意味ないんだよ。予備の紐を持ってきた方が全然いいだろ」


藤村 「力の藤村、キャンプには役に立たないのか」


吉川 「いや、そんなに落ち込むなよ。キャンプ以外のことをすればいいだろ。四天王の仲間同士で」


藤村 「お前も入れて五人や! 五人囃子や!」


吉川 「えー」


藤村 「お前の力がどうしても必要なんや!」


吉川 「そこまでいうならやぶさかではないけど」


藤村 「よし! 今日からワイらは麻雀五人囃子や!」


吉川 「それは四人でやれよ!」



暗転

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