ジャパン

藤村 「とにかく日本はアメージングだよ。治安は良いしゴミが一つも落ちてない。ゴミ箱がないにも関わらずだ」


吉川 「あ。あなた日本人じゃないんだ? 他の国から来たの?」


藤村 「そう。日本に来るまでは日本人は冷たいと思ってたんだけど違った。みんな優しいんだよ」


吉川 「そんなに優しいって自覚はないけど」


藤村 「優しいさ。なんてったってこっちが道に迷ってたところで撃ち殺されないからね」


吉川 「それはされないでしょ。どんな国に住んでるの? 撃ち殺さないことを優しさとは言わないよ」


藤村 「道案内をしてくれるし、決して金をせびったりもしない。金が無いなら臓器だとかも言わないんだぜ?」


吉川 「言わないよ。一般人が臓器をもらっても困るもの。新鮮な腎臓を摘出されたところで使い道がないから。強大な悪のシステムみたいのがないと」


藤村 「あと夜一人で歩いても安全」


吉川 「それはよく聞くけど、他の国はそんなに危険なの? なんでそんなに危ないのか逆にわからないんだけど」


藤村 「危ないよ。夜は闇の眷属に心を囚われてしまうから」


吉川 「それはもう世界観が違うじゃん。何その勢力。精神攻撃が来るの? 犯罪とかじゃなくて」


藤村 「昼間は力を潜めているけど、夜はそれに抗うのが難しい。人は脆い。あいつらはそこにつけ込んでくるのさ」


吉川 「逆にそれ、日本にはなんで進出してきてないの? 国の話じゃなくない?」


藤村 「あと日本食はもうレジェンドだよ! 見た目も美しいし特にユニークで驚いたのは白子?」


吉川 「あぁ、魚の精巣」


藤村 「そう! そんなものを食べるなんて完全にいかれてると思ったよ。でも食べてみたらこれが最高! これを食べたらもう哺乳類の脳みそなんて食べられないなって思ったよ」


吉川 「哺乳類の脳みそは食べてたの? そんなやつにいかれてるって思われたくなかったけど。逆にこっちからしたら結構その方がヤバい気がするんだよ」


藤村 「ちゃんと死んだやつだよ?」


吉川 「当たり前だろ。活けで食べてたらそれはもうモンスターだよ」


藤村 「ただアレだけは無理だった。生卵」


吉川 「あー、外国人で苦手な人はいるね」


藤村 「信じられないよ。生卵ってのは程よく腐らせてムカつくやつにぶつけるためのものだぜ? それを食べるなんて」


吉川 「最低の民度だな。せめて食べろよ。卵を何だと思ってるんだよ」


藤村 「あと公共交通機関が正確なのはすごいよ。電車なんて一秒の狂いもなく来るんだぜ? こっちじゃ根性を試すために線路に寝転がってても一日来ないなんてザラさ。日本だったら正確だから根性を試す暇もなく死んじゃう。流れ作業でどんどん死んじゃう。やっぱり効率化に関しては日本は一番さ」


吉川 「効率って言わないだろ。根性試しで死ぬ事故に対して効率を求める必要どこにあるんだよ。そもそも試すなよ。バカを競い合ってる場合じゃないだろ」


藤村 「そして何より影響力があるのがアニメ! アイラブアニメ!」


吉川 「やっぱり外国の人にも人気なんだな」


藤村 「アニメの中にはすべてがあるんだ! 暴力も犯罪もドラッグも悪意も堕落も! 人生のすべてが描かれている!」


吉川 「ろくな例がない! もっといいものも描かれてるだろ。見たいのか、そんなものばっかり描かれたアニメが」


藤村 「とにかく想像力がすごいんだよ、アニメは。この世には存在しないものなどがリアリティを持って描かれてる! 愛とか平和とか」


吉川 「ないって断言するなよ。あると信じておいてくれよ、それは。たとえ身近になかったとしても。フィクションじゃないんだよ」


藤村 「オタクに優しいギャルとか」


吉川 「それはまぁ、存在しないかも知れないけど。愛と平和と並ぶようなものか?」


藤村 「ありもしないものを想像力で膨らませて欲望を充足させる。それに関しては日本人にかなうものはないさ」


吉川 「確かにそうかも知れないね」


藤村 「日本を手放しで褒めてくれる外国人とか」


吉川 「皮肉強い!」



暗転

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