逆位相

吉川 「ヘッドホンもピンからキリまであるから自分がどういう物を求めてるのかちゃんと把握しないと選ぶのも難しいよ」


藤村 「そうなんだよなー。安いやつはどんな材質使ってるのか疑うくらい安いし、高いのはどんな材質使ってるのか疑うくらい高いもんなぁ」


吉川 「材質だけで値段が変わるわけじゃないけどな。むしろ材質はそんなに値段に影響しない部分だよ。技術やデザインやブランドのコンセプトなんかもあるし」


藤村 「そういうよくわからない価値観じゃなくて、なんかちょうどいいのが欲しい」


吉川 「ちょうどいいっていうのは難しいけど、技術は高いけど値段は抑えめでやってるやつとかがいいのかな」


藤村 「このノイズキャンセルってのは?」


吉川 「これはある程度の価格帯ならもう大体ついてる。逆位相の音を出して外から聞こえる音を消してるの」


藤村 「SF用語が出てきたな」


吉川 「音は波形じゃん? それと逆の波形の音を出すとぶつかり合って消えるんだよ」


藤村 「説明が上手いな。完全にわかった」


吉川 「完全にわかった? それもすごいな」


藤村 「でもそれもっと活用できるんじゃない?」


吉川 「そうだね。騒音対策とかでも使われ始めてるけど、逆位相の音もスピーカーで出すわけだから、工事なんかで広範囲に響く音だと難しいわけだよ」


藤村 「狭い範囲ならいいってことか」


吉川 「そう。だからヘッドホンやイヤホンには最適なの」


藤村 「だったら他にもさ、チンチンを出していても逆位相のチンチンをぶつければチンチンは隠せるわけじゃない?」


吉川 「なんにも理解してなかったな。逆位相のチンチンってなに?」


藤村 「ンチンチ」


吉川 「欠片も理解してないな。逆位相は音の波形のことって言ったよね?」


藤村 「まぁそうだけど。でも我々が見ている視覚というのは光なわけじゃん? 光ってのもまた波形なわけだ」


吉川 「ちゃんと理解してそうなこと言ってる。確かにそうだが」


藤村 「だから逆位相のチンチンをぶつければ」


吉川 「何だよ! 逆位相のチンチンって!」


藤村 「逆に聞くけど、逆位相の音って何?」


吉川 「だからそれは今鳴っている音の波形を分析して逆位相にしたものだよ」


藤村 「ならチンチンも分析して逆位相にすればいいだけじゃん」


吉川 「全然違うんだよ。あるのかよ、逆位相のチンチンが! 見せてみろよ」


藤村 「すごいセクハラしてくるな」


吉川 「そうじゃねえよ! チンチン見せろって言ってるわけじゃないよ。逆位相のチンチンを見せろって言ってるんだよ!」


藤村 「逆セクハラじゃん」


吉川 「逆セクハラはまた違う意味だろうが!」


藤村 「逆位相のチンチンだけ出しててもしょうがないだろ? 逆位相の音だけ出されてもそれは音じゃん。逆位相のチンチンだってチンチンだよ」


吉川 「チンチンに逆位相はないんだよ」


藤村 「それは虚数は存在しないっていうのと一緒だろ」


吉川 「全然一緒じゃないよ! チョイチョイ頭良さそうな例えを出すなよ! もっともらしく聞こえちゃうじゃねえか。チンチンの話をしてるくせに」


藤村 「逆位相の話をしてるんだよ。なんで音はよくてチンチンはダメなんだよ?」


吉川 「おいおい、音は良くてチンチンがダメな理由が本当にわからないか? あらゆる状況においてチンチンはダメなことの方が多いだろ。むしろチンチンが大手を振ってまかり通ってる状況を教えろよ」


藤村 「そんな時のための逆位相のチンチンだろ?」


吉川 「解決に導いたみたいな感じを出すなよ! お前は見たことあるのかよ、逆位相のチンチンを!?」


藤村 「普通に動画とかで」


吉川 「モザイクっつーんだよ、それは!」



暗転

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