三国志では

吉川 「俺だって別に言いたくていったわけじゃないんだよ。だけど誰かが言わないと改善されないだろ?」


藤村 「わかるよ。そういうことってあるよな」


吉川 「仲良くやっていた方がいいに決まってるじゃん。でもそれだけじゃダメだろ?」


藤村 「古代中国、三国志の時代にこんな話があってさ」


吉川 「なに、急に?」


藤村 「天才軍師として有名な諸葛孔明知ってる?」


吉川 「諸葛亮? ゲームで知ってる。ビーム出す人だろ?」


藤村 「そうそう。そのビームの孔明がものすごく期待していた若手の馬謖ってやつがいるんだけど、戦で取り返しのつかない失敗をしたんだ。孔明は馬謖のことを本当に目をかけていたんだけど、なぁなぁにしてしまうと軍の規律が成り立たなくなると泣きながら馬謖を処刑したんだ」


吉川 「あぁ。わかるな。そう! そういうことだよ。同じようなことは歴史に繰り返されてるんだな」


藤村 「まぁ、理不尽でも自分を納得させながらやってくしかないよな。酒でも飲んでさ」


吉川 「そう言えばこの間、笹咲と居酒屋に行ったんだけど二人とも結構酔っちゃってさ、翌日にあいつが『俺金払ってないよね? っていうか財布に金が増えてるんだけど』とか言い出して。俺もあんまり記憶がなくてさ。で後からわかったんだけど、あいつがカードで払って差額を俺が渡したってだけで」


藤村 「なるほどな。三国志にこういう話があってさ」


吉川 「あ、うん」


藤村 「張飛っていうすごい強い武将がいるんだけど知ってる?」


吉川 「諸葛亮くらい有名?」


藤村 「同じくらい有名」


吉川 「わからないかも」


藤村 「その張飛はすごく強いんだけど酒癖が悪くてね。城の留守を任されたんだけど酒に酔い潰れてる間に乗っ取られたんだよ」


吉川 「へぇ」


藤村 「ま、そういうこともあるから。酔うのも程々にな」


吉川 「ん? あ、終わり?」


藤村 「程々にな」


吉川 「まぁ、それはわかったけど。三国志の引用しなくてもよくなかった?」


藤村 「歴史は繰り返すものだから」


吉川 「最初の諸葛亮のやつは説得力あったけど、そんな全部三国志になぞらえなくてもいいよ」


藤村 「三国志の時代にさ、話好きな陳という男がいたんだけど、勝手にベラベラ喋っておいて相手が思ったようなリアクションじゃないと機嫌悪くなるっていう厄介なやつだったんだ」


吉川 「なにそれ、俺がそうだっていうの? 誰だよ陳って。有名なのかよ」


藤村 「話好きなやつ」


吉川 「知らねえよ! いるだろ、そのくらいのやつは三国志の時代じゃなくても。どの時代でも世界中にいるよ、そういうやつ」


藤村 「三国志の時代にさ」


吉川 「もういいよ、三国志は。なんでも三国志にたとえられると思ったら大間違いだぞ」


藤村 「大間違いの楊という男がいてさ」


吉川 「完全に俺の言葉に引っ張られて言っただけだろ。歴史に残らないよ大間違いの楊は」


藤村 「なんか人が説得力のある話をしてもケチばかりつけてたんだって」


吉川 「俺だろ! 俺の話だろ、それは。一旦三国志を経由しないで直で言って!」


藤村 「三国志の時代の電車の乗り換えってさ」


吉川 「もう嘘だろ! 三国志の時代に電車はないだろ!」


藤村 「ビームはあるのに?」


吉川 「ビームもないだろ。諸葛亮は出すけど! あれは凄さを抽象的に表した何かだろ?」


藤村 「ファミレスで人気の猫の配膳ロボットあるじゃん?」


吉川 「かわいいやつね。知ってる」


藤村 「三国志の時代の諸葛亮の嫁はあれと同じの発明してたんだよ?」


吉川 「嘘だろ。色々フィクションが混じってそうなって伝わっただけだよ」


藤村 「三国志のこと何も知らないくせに軽率に否定するなよ」


吉川 「いや、だって」


藤村 「そうやって何でも否定から入る人間のこと、何ていうか知ってるか?」


吉川 「知らないけど、三国志由来の言い方があるんだろ?」


藤村 「いや? 三国志の時代にはいなかったんじゃないかな」


吉川 「いはしただろ! 急にチャンスを無にするなよ!」



暗転

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