藤村 「『人』という字は人と人が支え合ってることを示しているようにも見えるんです」


吉川 「それは漢字の成り立ちとは違いますよね?」


藤村 「違います。しかし日常で人々が目にするたびに、きっとこうなんだろうと思いを馳せること、それ事態はロマンチックなことじゃないですか?」


吉川 「まぁ、正しい学説みたいに主張しなければ、言葉遊びの範疇なのかな」


藤村 「そしてその支え合った二人の人、その肩にドーンと乗ったのが『大』ですね」


吉川 「全然ロマンチックさなくなったな。なんで乗ったの?」


藤村 「若者たちの肩に老人が乗っかって苦しめるという現代を風刺した感じで」


吉川 「風刺! 急に? 話がシビアになってきたぜ」


藤村 「まぁ、元々は表意文字なのでアルゼンチンバックブリーカーから作られたと言われてますが」


吉川 「それは嘘だろ。そう言う嘘をドサクサに紛れさせるなって言ってるんだよ!」


藤村 「ジジイだけならまだしも、ここに畜生まで飛び乗ったのが『犬』です」


吉川 「畜生っていうなよ! ワンちゃんを。なんで犬も乗ってきたんだよ」


藤村 「まぁ、犬は聞き分けが良いからちゃんと降りて『太』となりました」


吉川 「ジジイは!? ジジイは聞き分けろよ! いつまで乗ってるんだよ」


藤村 「このように、漢字にイメージを乗せることで豊かな感情を育むことができます」


吉川 「ジジイに対するヘイトしか湧いてこなかったけど」


藤村 「これは『鬱』という漢字です」


吉川 「どえらい難しいのきたな。どうイメージを乗せるんだ、それに」


藤村 「さてこのように、様々な漢字があります。では他の漢字も詳しく見ていきましょう」


吉川 「鬱は!? 鬱は触れないの? なんで出してきたの?」


藤村 「こんな漢字があるよっていう紹介です」


吉川 「知ってるよ。なにか言ってくれるのかと期待したのに。犬なんかよりずっと期待値大きかったよ」


藤村 「『田』という漢字があります」


吉川 「これはわかりやすいよな。田んぼの見た目そのままだし」


藤村 「これはとある救世主が磔にされた十字架をモニュメントにしたものとも見えます」


吉川 「見えないよ! そんな風に思ってる人いないよ。その十にだけフォーカス当てることないから」


藤村 「あとお歳暮で送られてきたインスタントコーヒーか何かの箱、仕切りがピッチリしていてなにかに使えるんじゃないかなぁと思いがちだけど意外となんにも使えないやつの見た目がこんなです」


吉川 「確かにそんなだけど。『田』みたいになってるけど、お歳暮の空箱だなって思ってる人いないよ!」


藤村 「あれ、意外としっかり作ってあるからただ捨てるのもったいないんだけど、なにかに使えませんかね?」


吉川 「知らないよ! 靴下とかハンドタオルとかをしまっておけよ!」


藤村 「グッドアイデア! ちょっと入れてみます。あれ、意外と狭いな。これ無理やり入れちゃダメかな? あー、なんか無理やりやったら『凶』みたいになっちゃった」


吉川 「もう捨てろよ! 凶になった箱はもうおしまいだよ。縁起も悪い!」


藤村 「あと容量の多いお歳暮だと更に大きめのものが入っていて『異』みたいにスペースがたくさんあったりしますね」


吉川 「お歳暮の箱から離れろよ。お歳暮の箱を表現しようと目指してる漢字なんてないんだよ! 他にもうちょっと適切なたとえあるだろ!」


藤村 「ただ捨てるのがもったいなくて」


吉川 「そのもったいなさは自分の心の中に秘めておけよ。他人に言うほどのことじゃないんだよ。子供の工作にでも使ったらいいだろ!」


藤村 「グッドアイデア! さっそく子供に使ってもらいましょう」


吉川 「すぐに採用されるな。それほどグッドアイデアでもないよ。よっぽどアイデアに飢えてたんだな」


藤村 「子供はアイデアマンですから。放っておいても素晴らしいオブジェにしてくれます。こんな空き箱でも上にキレイな星を飾って、見てください」


吉川 「あぁ、意外といいですね」


藤村 「これは『糞』って漢字で表せますね」



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る