被り

吉川 「ハロウィンどうだった?」


藤村 「それが最悪でさぁ。せっかく気合い入れたのに笹咲とモロ被りしてて」


吉川 「コスプレが?」


藤村 「お互いに会った瞬間もう崩れ落ちたからね。最悪すぎて」


吉川 「あー、そういうのあるのか。でも二人セットで併せたみたいな感じでいいんじゃないの?」


藤村 「そういうキャラじゃないもん。そりゃ五人くらい集まってればそういうのって言えるかもしれないけど。二人じゃネタ的にも微妙だし」


吉川 「そうかぁ。で、何のコスプレだったの?」


藤村 「アーノルド・シュワルツェネッキュバスだけど」


吉川 「え? なに? ごめん、もう一度」


藤村 「アーノルド・シュワルツェネッキュバスだけど」


吉川 「知らない! 聞いたことないワードだよ。初めての言葉すぎて耳がビックリしてる」


藤村 「アーノルド・シュワルツェネッガーは知ってる?」


吉川 「それは知ってるよ。シュワちゃんだろ?」


藤村 「そのサキュバスです」


吉川 「そのサキュバスって概念を知らないんだよ。なんだ、そのサキュバスって」


藤村 「ゴールデンレトリバーのプリンがポムポムプリンでしょ?」


吉川 「そんなサンリオ文法で乗り切れることなの?」


藤村 「それと一緒でアーノルド・シュワルツェネッガーのサキュバスでアーノルド・シュワルツェネッキュバス」


吉川 「想像が何もできない」


藤村 「だからゴールデンレトリバーのプリンは?」


吉川 「改めてそう言われるとゴールデンレトリバーのプリンでポムポムプリンも想像できないや」


藤村 「そっかぁ、そうなると難しくなるな」


吉川 「難しいとかじゃなくて、そのアーノルド・シュワッキュネスが被ったんだろ? 笹咲と」


藤村 「フレッシュネスみたいになってるな。アーノルド・シュワルツェネッキュバス」


吉川 「ごめんな。理解が難しくて正確な名前を覚えるという作業にまだ脳がたどり着いてない」


藤村 「アーノルド・シュワルツェネッキュバスはアーノルド・シュワルツェネッキュバスしかないだろ。逆に聞くけど、アーノルド・シュワルツェネッガーのサキュバスを他になんて名前で呼ぶの?」


吉川 「呼ばないもの。それに対して名前をつけるという行為を人類はまだしてないはずだから」


藤村 「アーノルド・シュワルツェネッキュバスだよ」


吉川 「うん。それが笹咲と被ったってことは、概念としては一般的に共有されてるものなの?」


藤村 「俺が最初にたどり着いたと思ったんだけどね。シンクロニシティっていうのかな」


吉川 「そんなシンクロニシティある? どうしてよりによってそこにたどり着いちゃったの? 人類の中で二人だけ」


藤村 「ただ違ってる部分があって、俺はコマンドーのアーノルド・シュワルツェネッキュバスだったんだけど、笹咲はプレデターのアーノルド・シュワルツェネッキュバスだったんだよ」


吉川 「どう違うのよ! ほぼ同じ重火器装備のムキムキ軍人! というかもう、アーノルド・シュワルツェネッガーのコスプレでいいだろ。なんでサキュバスを足したの!?」


藤村 「せっかくのハロウィンだから一捻りいれないとまずいなと思って」


吉川 「一捻りがサキュバスなのもまずいよ! サキュバスが一番融合しないモチーフがアーノルド・シュワルツェネッガーじゃない? 妖艶な魔女的なものだろ。男ならインキュバスだろ?」


藤村 「当時のアーノルド・シュワルツェネッガーはテストステロン過多で男性的すぎるからサキュバスで中和したんだよ」


吉川 「されないだろ? なんだ、サキュバスで中和って。そんなサキュバスの使い方初めてみたよ」


藤村 「インキュバスだと本当に猥褻物陳列罪になってしまうので」


吉川 「どっちもどっちじゃねーの? 知らないけど!」


藤村 「シュワルツェネッガー自身はジュニアで妊娠してるから割とサキュバスと親和性が高かったんだよ」


吉川 「なにをもってして親和性って言ってるんだ? 慣れが来ない。なんかずっとアーノルド・シュワルツェネッキュバスには慣れが来ない気がする」


藤村 「でも被ったのは本当に最悪だったから。ほら、写真撮ったけどさ、なんか変じゃん」


吉川 「……どれ? なんかもう一人いるじゃねーか!」


藤村 「違うよ。これはたまたま現地にいたサキュベスタ・スタローンの人」


吉川 「もうこの三人で義兄弟の契りを交わせよ!」



暗転

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