不動産

藤村 「こんな時代ですから投資用に考えて購入される方も増えてるんですよ」


吉川 「そうですか。でも私は自分で住むためなんで」


藤村 「もちろん居住目的の方も満足できる物件を取り揃えております。ちなみにご希望はどのようなものがありますか?」


吉川 「具体的に何かっていうのはないんですが、住みやすいところが良いです」


藤村 「もちろんそうなんですが、やはりそうなると価格の方も高くなってしまうので、そこでオススメなのがやや難ありっていうのがありますけど」


吉川 「やや難あり?」


藤村 「人によっては気にならないけども、一般的に忌諱されるために価格が控えめになってる物件ですね。例えば隣にお墓があるとか」


吉川 「お墓。気になるって言われると気になるかなぁ」


藤村 「ちなみにお墓、お寺の周辺は治安が落ち着いていて地盤とかも良いむしろ優良物件が多いんですよ」


吉川 「そうなんだ。逆にお墓のそばの方が?」


藤村 「はい。ですからそのイメージさえ嫌でなければむしろオススメなんですがね」


吉川 「そっか。そんな気にならないって言ったら気にならないかもだけど」


藤村 「そうですね。じゃあこれだけは嫌だっていうのはありますか? たとえば近隣に小学校や幼稚園があって昼間ちょっと騒音があるとか」


吉川 「昼間。平日は仕事なんで問題ないと思いますけど」


藤村 「ただそう言って購入された方も、コロナの影響で自宅勤務となって困ったという話もあるので」


吉川 「なるほどー。わからないな」


藤村 「火事とかは気になります?」


吉川 「火事? 火の?」


藤村 「はい。特に気にならないのでしたら、よく出火する物件もありますし」


吉川 「それは気になるよ! 火事はダメだよ」


藤村 「あ、ダメ派ですか。わかりました。オススメなのはこちらの物件。立地もよく将来的に値上がりもする見込みです」


吉川 「ここ良いじゃない? え、安い。なんでこれだけ安いの?」


藤村 「周りがほぼキチガイなんで」


吉川 「周りがほぼキチガイ! 住人が!? なんでそうなっちゃったの?」


藤村 「普通の人はもたずに引っ越しちゃうんでどんどん濃縮されちゃって。マンションの理事会も過半数がキチガイですけど、それでよろしければ」


吉川 「よろしいわけないよ。そんなところ近寄りたくない」


藤村 「そうなりますと。あ、そうだ。ちなみにディズニーランドとか好きですか?」


吉川 「好き! 近くとか?」


藤村 「でしたらこちらの物件。ディズニーキャラクターが好きな方なんてうってつけです」


吉川 「全然舞浜に近くない。なにこれ?」


藤村 「ミッキーとミニーのモデルとなったキャラクターが出てきまして」


吉川 「ネズミじゃねえか! それはディズニー関係ないよ」


藤村 「でもキャストは夜しか出ないという話ですから」


吉川 「キャストって言うなよ。ネズミを。ちゃんと駆除しろよ」


藤村 「立地などいかがでしょうかね。かつて人気のあったリバーサイドとか。この物件なんかはいかがでしょう」


吉川 「あ、川の側?」


藤村 「はい。隣にドブ川が流れてまして」


吉川 「ドブーサイドじゃねえか。川って言い張るな」


藤村 「気になるならこちら、リバーサイドで尚且つ千葉ーサイドです」


吉川 「千葉! 千葉の横! 売りにするなよ、千葉を」


藤村 「タマーサイドがいいですか?」


吉川 「タマーサイドなに!? 多摩なの埼玉なの? どこのサイドなの」


藤村 「どっちもです。間の」


吉川 「どっちもだからって全然嬉しくないけど」


藤村 「あと近くに東京サマーランドが」


吉川 「引っ張られてるだろ。サイドに。サマーランドはリバーサイドとライム踏んでるわけじゃないんだよ」


藤村 「ちなみにこちらの物件は高層階ですとオーシャンビューになってまして、リッチな空間となっておりますね」


吉川 「海かぁ。海は好きだけど」


藤村 「リッチな空間が好きな人たちが集まるのでおっさん臭もします」


吉川 「最悪だな。セットなの? オーシャンビューとおっさん臭は」


藤村 「どっちかはないですね」


吉川 「できるだろ、住み分け! ちゃんとしろよ!」


藤村 「これがたまらないっていう人が結構いるんで」


吉川 「いるのか。おっさん臭が落ち着くって。そいつもおっさんだろ」


藤村 「ノーサンキューですか?」


吉川 「その言い方もおっさん臭い!」



暗転

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