今更

吉川 「あのアニメ見た? めちゃくちゃ良かったんだよね」


藤村 「今更か。俺はそもそも原作の時点でいいと思ってたから」


吉川 「あ、そうなのか。いいよね」


藤村 「うん。まぁ、今更感はあるけどさ。でもしょうがないよね、それは」


吉川 「そっかー。原作のマンガは結構でてるの?」


藤村 「多分でてるんじゃない?」


吉川 「え、原作好きなんじゃないの?」


藤村 「最初ね。最初のまだ誰も気づいてない頃に俺は面白いなって発見したから」


吉川 「ずっと追いかけてるわけじゃないの?」


藤村 「いや、もう今更読めないよね。最初に俺は来るなって見越してて、やっぱり来たなーって感じで」


吉川 「好きなわけじゃないの?」


藤村 「最初の時点で予見してたから。ま、今更だよね。やっと世間が気づいたかって感じ」


吉川 「ふぅん。そういえば前に言っていた店、やっと行ったよ」


藤村 「あ、今更? 俺は半年前に行ったけどね」


吉川 「美味かったねぇ」


藤村 「あ、そう。でも半年前の方が美味かったんじゃないかな」


吉川 「それは変わらないんじゃない?」


藤村 「でもほら、もう今は流行ってアレでしょ? 今くらいで満足する人にとってはいいかもしれないけど。俺はもう今更かな」


吉川 「流行ってたけど別に美味しかったし」


藤村 「半年前はよかったよ。今はもうあれかな、今更いいかな」


吉川 「ふぅん。まぁ、食欲の秋だしな」


藤村 「今更かぁ。そっかそっか。一般人にとっては今くらいが丁度食欲の秋なんだな。俺はほら、正月くらいにもう食欲だったから」


吉川 「なに食欲って?」


藤村 「食欲の初春だった」


吉川 「そんな言葉ないでしょ」


藤村 「まぁ、みんな今くらいにやっと食欲に目覚めたのかな。俺はもうだいぶ前にお腹ペコペコだったから」


吉川 「食欲自体はずっとあるだろ。別に初めて食欲が芽生えたわけじゃないよ」


藤村 「でも俺は数段早く食欲があったなぁ。秋はむしろ満腹なくらい」


吉川 「別に瞬間瞬間の満足度を言ってるわけじゃないんだよ。満腹だってすぐ減るだろ」


藤村 「秋はずっとかな」


吉川 「どんな胃してるんだよ。一度病院に見てもらえよ! だいたい食欲の秋ってのは旬とかを意味してるんだから」


藤村 「あー、感度が遅い人たちにとっては旬がちょうどいいんじゃないかな」


吉川 「旬はどんな人にとってもちょうどいいんだよ。ちょうどいいことを旬っていうんだから」


藤村 「俺くらいだともっと前に食べちゃうから。まだ花も咲いてないような状態で」


吉川 「草だろ、それは可食部じゃない」


藤村 「魚とかもまだ小さくて味がないくらいの時に食べてるから」


吉川 「なんでそんなことするんだよ! 可哀想だろ」


藤村 「やっぱりアンテナを伸ばしてるからさ、人より早くそういうのキャッチしちゃうんだよね」


吉川 「キャッチしてもリリースしろよ。稚魚だろ」


藤村 「まぁ、今くらいで満足できる層の人はそれで十分なんじゃないの?」


吉川 「そうだよ。十分だよ。むしろお前が不十分に思える」


藤村 「読書も運動も梅雨くらいにはやり尽くしたから」


吉川 「早ければいいっていうものでもないだろ。秋にやれよ」


藤村 「いいんじゃない? 今更でも楽しんでる人にとっては。俺はすでにそろそろスタッドレスを外そうと思ってるくらいだから」


吉川 「タイヤを!? なんでだよ。今まで暑くて何の役にも立ってないだろ、スタッドレスタイヤ」


藤村 「まぁ、みんなより半年は早くやってたかな。その時点で気づいてたから」


吉川 「なにに気づくんだよ。雪だろスタッドレスタイヤは」


藤村 「俺的にはそろそろ花見の準備をしておくけど、まぁみんなは春くらいに花見の良さに気づくんじゃないかな」


吉川 「そうだよ。春に咲くから。今花見の良さに気づいても花は咲いてない! これから寒くなるんだよ」


藤村 「だいたい土の状態を見て想像するから大丈夫。感度がいいから」


吉川 「寒い中で? インフルエンザだって流行ってるし、コロナだって収束したとは言えないのに」


藤村 「あー、今更それか。コロナとか昔やったなぁ。俺はすでに新しい奇病に罹ってるから」


吉川 「早く病院行って色々診てもらえ!」



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る