お客様

吉川 「ご注文はお決まりですか?」


神  「えっと。あの、初めてでよくわからないんだけど」


吉川 「そうですか。大まかに言いますと、こちらがコーヒーになってまして、こちらがミルク系ですね。そしてフルーツなんかのドリンクがこちらになります」


神  「あの、フィリピーノみたいなやつは?」


吉川 「フィリピーノ。フィリピーノ? フィリピンのフルーツを使ったものですかね?」


神  「こっちもわからないんだけど。よく聞くやつで」


吉川 「フィリピーノ。あ、フラペチーノ?」


神  「そうかも! それだフェラチーノ?」


吉川 「違います。フラペチーノ。冷たいアイスやクリームなどを使ったドリンクになりますね」


神  「それ! 若い人はみんなそれ飲んでるんだよね?」


吉川 「そうですね。大変人気があります」


神  「じゃあそれを」


吉川 「種類が色々とありまして、お茶系だとこちらが抹茶、でほうじ茶。フルーツもマンゴーやストロベリーがございまして。コーヒー系もございます」


神  「フェラチーヨの中でもいっぱいあるの?」


吉川 「フラペチーノ。フラペチーノの種類ですね」


神  「そうなるともうわからないな。一番いいフェラチーヨはどれなの?」


吉川 「フラペチーノ。人気があるのは、ストロベリーなんかは人気がありますね」


神  「美味しい?」


吉川 「私も大好きです」


神  「じゃあそれにする」


吉川 「こちらサイズがトールのみになりますがよろしいですか?」


神  「え、どういうこと?」


吉川 「他の種類ですと、ショート、トール、グランデ、ベンティと大きさがありまして」


神  「もう一個もわからない。フェーラでお願いします」


吉川 「フェーラはないんです」


神  「あ、フェラチーオ?」


吉川 「違います。フラペチーノ。なんかもうどんどん違ってます。いいですよね、トールで」


神  「そのトールってのは何味なの?」


吉川 「いや、味じゃなくてサイズです。味はストロベリーのフラペチーノでよろしいんですよね?」


神  「もうわからないのでそのフェラでおまかせします」


吉川 「フラペ! フラペチーノ! はい、かしこまりました」


神  「親切にありがとうね。ごめんね、こんな何もわからないお爺さんが」


吉川 「いえいえ、ゆっくり味わってください」


神  「なにか願いとかある?」


吉川 「はい?」


神  「願い。神様なんだけど」


吉川 「神様。お客様は神様ということですか?」


神  「そうです。お客の神様です」


吉川 「え、なにかクレームとか?」


神  「全然。そんなことないよ。ただ親切だったから願いを叶えようかなって」


吉川 「願い? ちょっと私じゃわからないですね。マネージャー呼んできましょうか?」


神  「いや、そういうのじゃないんだよ。神様が願いを叶えるってのは聞いたことある?」


吉川 「まず神様っていうのが、その比喩的なことですか?」


神  「比喩的なって?」


吉川 「お客様は神様ですって言いますよね?」


神  「知らない。流行ってるの、それ?」


吉川 「いや、流行ってないです。流行ったのは多分ものすごく昔で」


神  「そりゃ神様だって買い物に行けばお客さんになるけど、そういうこと?」


吉川 「違いますね。つまりあなたは人間ではない超常的な神様ということですか?」


神  「そう言われちゃうと変態みたいで恥ずかしいんだけど」


吉川 「あ、恥ずかしいんだ。ちょっとその感情もあんまりわからないんですが」


神  「たまたまちょっと色々できるだけ。それを言ったらあなただって、そのフェラチーオができるわけじゃない?」


吉川 「フェラチーオはできないです。誤解を招きます」


神  「あ、でも色々できるんでしょ? ベンティとかできるんでしょ?」


吉川 「別に変な意味じゃないですよ。ベンティは」


神  「でも私にできないことができるんだから。立派なものですよ。で、願い事はお決まりですかね?」


吉川 「えっと。あの、初めてでよくわからないんですけど」



暗転

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