ぺてんし

空気読み

吉川　「空気が読めないって言われるんです」

藤村　「えーっ！？　本当ですか？　全然そんな風には見えないですよ！」

吉川　「なんか自分では良かれと思って言ってるんですけど、相手を怒らせちゃったり」

藤村　「わかります！　そういうのってタイミングですからね。同じ言葉でもタイミングが悪いと反応が変わっちゃう。でもこっちは知りようがないですから。相手の問題なんで」

吉川　「で、私の知り合いの中で一番空気読むのが上手い人と言えば藤村さんじゃないですか？」

藤村　「私！？　いやいやいや！　それはないって！　私も結構影で色々言われてると思いますよ？」

吉川　「いいえ、藤村さんを悪く言ってる人なんて見たことないです」

藤村　「そうかなぁ？　でもそれを言ったら吉川さんこそ！　吉川さんの悪口こそ聞いたことないから！」

吉川　「悪口言われるほど話題にもならないってだけなんじゃないですか」

藤村　「またまたぁ！　なんでそんなこと言うんですか。私は吉川さん好きですよ？」

吉川　「なんかこうして話してても藤村さんは話しやすいしどんどん気分が乗ってくるんですよね」

藤村　「そうですねぇ。空気が読めるかどうかはわからないですけど、さしすせそって知ってます？」

吉川　「料理の？」

藤村　「そうですそうです。その料理のさしすせそみたいな感じで、相槌のさしすせそがあるんですよ」

吉川　「へぇ～」

藤村　「さが『さすがですね』、しが『知らなかった』、すが『すごいですね』、せが『センスありますね』、そが『そうなんですか』で、これを駆使すれば相手はどんどん喜んでくれるという」

吉川　「はぁ」

藤村　「今のも、『はぁ』ではなく、さしすせそのどれかで答えてくれれば」

吉川　「し、知らなかった」

藤村　「それです！　いいじゃないですか！」

吉川　「はぁ、なるほど。こういうのがあるんですね」

藤村　「私はむしろあんまり言わないですけどね。会話のキャッチボール感がなくなっちゃうんで」

吉川　「初心者用ってことですか」

藤村　「だんだん慣れていったら今度はパピプペポとかで」

吉川　「パピプペポ？　パピプペポもあるんですか？　パもピも何も思いつかないんですけど。そんな文字で始まる言葉あります？」

藤村　「パないっすね！　そんなすぐに活用しようとするなんて」

吉川　「パ、あったな。ピはでもやっぱり難しいんじゃ？」

藤村　「ピンチですね。でもなんとかなりそうな気がします」

吉川　「ピ、切り抜けた。いけることがあるんだ、ピで」

藤村　「プーチンのせいですね」

吉川　「え、急に政治色が。思ってもなかった方向に相槌が飛んでいった感が」

藤村　「ペンタゴンの指示に従ったまでなんで」

吉川　「国際政治のいざこざが色濃くなってきた。その相槌、どのタイミングで使うの？」

藤村　「ポコチンしまい忘れてました」

吉川　「続かないでしょ、それじゃ会話」

藤村　「これを駆使すればどんな状況でも対応できるんで」

吉川　「できないでしょ、さすがに。呪術廻戦の最新話読んだ？　って会話で」

藤村　「ペンタゴンの指示に従ったまでなんで」

吉川　「話のスケールが大きくなっちゃう。日常会話のつもりだったのに」

藤村　「プーチンのせいですね」

吉川　「プーチンのせいではないよ。結構色々なことはプーチンのせいかもしれないけど、この流れはプーチンのせいじゃないよ」

藤村　「ピンチですね」

吉川　「上級者向けだなぁ。パピプペポ使いこなせる気がしない」

藤村　「プーチンのせいですね」

吉川　「私の話ですよ。そもそも私が空気読めないって話なんで」

藤村　「プーチンのせいですね」

吉川　「プーチンの出番が多い。そんな万能なワードじゃない気がするんだけど」

藤村　「さすがですね」

吉川　「さしすせそに戻った。やっぱりそっちの方が安定感がある。私はやっぱり初心者なのでそっちからにします」

藤村　「それがいいかもしれないですね。でも吉川さんならすぐにパピプペポも活用できると思うなぁ」

吉川　「いやぁ、絶対に無理ですよ。ただでさえ空気読むのにいっぱいいっぱいなのに」

藤村　「こういうのは慣れですよ。どんどん使っていきましょう」

吉川　「なんか色々とありがとうございました」

藤村　「私で良ければ、こっちこそ楽しかったですよ」

吉川　「では、失礼します」

藤村　「ポコチンしまい忘れてました」

吉川　「それ使うタイミングないでしょ！」

暗転