バスケ

吉川 「さぁ、バスケットボールも大変盛り上がっておりますが。今回は解説に業界随一のバスケフリークと名高い藤村さんをお呼びしております。藤村さん、よろしくお願いします」


藤村 「よろしくお願いします」


吉川 「藤村さんはバスケットボールに造詣が深いということですが」


藤村 「いえ、好きなだけで詳しくはないんですよ」


吉川 「ご謙遜を。学生時代などはもちろん?」


藤村 「はい。もちろん高校も中学も、小学生の頃もバスケ部でした」


吉川 「ちなみに実力の方は?」


藤村 「はい。試合の方は出させてもらえなかったんですけど、一番声は出てましたね」


吉川 「そうですか。それでもバスケットボールが大好きだという」


藤村 「はい。バスケに対する執着なら誰にも負けません」


吉川 「今回はマニアならではの視点での解説をお願いしたいと思います」


藤村 「わかりました」


吉川 「早速ですが、先程の名場面。これはあのスラムダンクですね」


藤村 「はい。ダンクシュートの一種ですが、リングに叩きつけるように入れる極めて品のないシュートですね」


吉川 「勢いよく叩きつけるわけですね。まさに闘志をぶつけるような豪快なシュート!」


藤村 「やらなくてもいいのに。相手にも失礼なスポーツマンシップの欠落したシュートですね」


吉川 「あぁ、藤村さんはお嫌いですか?」


藤村 「いえ、一般論として。これやるやつはろくな人間じゃないんで」


吉川 「そうですか。では気を取り直して。おっとここは?」


藤村 「あぁ、3秒ルールですね」


吉川 「フリースローレーンの中に3秒以上とどまってはいけないというやつですね?」


藤村 「そうです。食べ物が地面に落ちた時に食べてもOKなのと同じ理屈です」


吉川 「同じ? 同じではないですよね?」


藤村 「まぁ、ほぼ同じですね。本当は菌とかがついて衛生的には問題があるけれども、見て見ぬふりをするという欺瞞ですね」


吉川 「それは、食べ物の話ですよね。バスケットボールではなく」


藤村 「バスケのルール自体欺瞞ですから、ボールを持って歩いちゃダメだってのも欺瞞。人間はボールを持って歩けるのに。わざと禁止してそれを面白がってるだけ」


吉川 「おおっと、ここでホイッスル。どうやらファウルがあった模様です」


藤村 「ディフェンスがプッシングしましたね。ちなみにプッシングというのは発音は似てますが女性器とは……」


吉川 「試合に注目ください! フリースローです! っとここは落ち着いて決めた!」


藤村 「女性器はプッシ……」


吉川 「おっとぉ!? 大変なことが起きてます! 試合を見守りましょう! ここで上手くボールをスティール。反撃に転じます」


藤村 「スティールは盗むということですね。いうなれば犯罪用語です」


吉川 「バスケットボールのスティールはボールを相手から奪うことですね!」


藤村 「そうです。窃盗と言うよりは強奪ですね」


吉川 「ああっと!? ここはパスを出さずに自らドリブルで切り込む!」


藤村 「今のところは分かりづらいけどフェイクが2回入ってますね」


吉川 「そうですか。なるほど、ディフェンダーを引き付けてるということですね」


藤村 「相手を上手く騙してますね。やってることは詐欺師と一緒です」


吉川 「すみません、ちょっと言い方に気をつけた方がいいかと」


藤村 「相手のディフェンダーは正々堂々と止めに来たのにそれを騙す。スポーツマンシップどころか人としてどうかと思うような行動ではあります。小さいお子さんに悪影響が出なければよいのですが」


吉川 「藤村さん、バスケットボールはお好きなんですよね?」


藤村 「はい。大好きでした。わかりますか? どれほど愛しても相手から愛されない苦しみを!?」


吉川 「あ……。あの、もちろんその、愛の形には色々とありますから」


藤村 「どうせ愛してもらえないなら、いっそのこと相手を殺してやりたい! そんな気持ちが! わかりますか!?」


吉川 「一旦CMに入ります」


    CM


吉川 「改めまして試合の実況の方を続けたいと思います。なお解説の藤村さんは急用ということでトラベリングされた模様です。ここからは私、吉川一人でお送りいたします」



暗転

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