ぺてんし

霊

吉川　「見てください、この写真。ここ！　私の横に変なものが写っていて」

藤村　「あー、たしかに写ってますね。でも大丈夫です。これは悪い霊ではないですから」

吉川　「やっぱり霊なんですか？」

藤村　「はい。ただこちらの方はあなたのことを見守ってくれてるので大丈夫です」

吉川　「見守ってくれてる。どんな霊なんですか？」

藤村　「めちゃくちゃエロい未亡人です」

吉川　「めちゃく……。え？　なんて？」

藤村　「めちゃくちゃエロい未亡人です」

吉川　「めちゃくちゃエロい未亡人の……霊？」

藤村　「はい。もうとにかく乱れまくってる」

吉川　「あぁ。え、それってどうしたらいいんですか？」

藤村　「気にすることはないです。あなたのことを見守ってくれてるだけなんで」

吉川　「気にするなって言われても。めちゃくちゃエロい未亡人なんですよね？」

藤村　「はい。もう眼差しからエロスが溢れてる。常にうるうるしてるし」

吉川　「うるうるしてるんだ。霊なのに」

藤村　「もう唇なんてぷるっぷる！　たまらんぜよ」

吉川　「そんな坂本龍馬みたいな口調になるほど。ボクに憑いてるんですよね？」

藤村　「バッチリついてます。よくもまぁ、そんな面積の少ない生地で」

吉川　「な、なんで憑いてるんですか？」

藤村　「そこまではちょっとわからないですね。事情は様々だから」

吉川　「あ、そうなんだ。エロい未亡人に身に覚えないんですけど」

藤村　「身に覚えなくても憑く時は憑きますから。なんか藪を通ったら付いてきちゃったとかあるし」

吉川　「そんな引っ付き虫みたいなものなの？　エロい未亡人が？」

藤村　「多少は影響があるかもしれないけど、悪い霊ではないからなぁ」

吉川　「影響があるの？　どんな？」

藤村　「悪寒を感じたり」

吉川　「あ、別にエロい影響ではないんだ。なんだ」

藤村　「気にしなくていいと思いますよ」

吉川　「いや、気になるでしょ。エロい未亡人て言われたら。なんかボクの方からどうにかしたらいいんですかね？」

藤村　「どうにかって？」

吉川　「わからないですけど、エロ的な」

藤村　「あー、そういう目で見られたくないみたいですね」

吉川　「そういう目で見られたくないの？　めちゃくちゃエロい未亡人なのに？」

藤村　「そりゃそうでしょ。グラビアアイドルだからってセクハラをしていいわけじゃないですよ」

吉川　「そういうもの？　ボクに憑いてるのに？」

藤村　「ほら、仕事とプライベートは別だから」

吉川　「どっちがどっちなの？　エロは仕事なの？　霊がプライベート？」

藤村　「まぁ、どっちって言うわけでもないと思いますけど。エロいからこそ軽く見られたくないっていう気持ちもあるじゃないですか」

吉川　「あんまりよくわからないけど。これ、ずっと憑いてるんですか？」

藤村　「そうですね。恐らくはずっと」

吉川　「例えばその、ボクがお風呂に入ってる時とかも？」

藤村　「憑いてるでしょうね」

吉川　「その、大丈夫なんですか？」

藤村　「なにがですか？　あ、水に触れてもってことですか？　霊にもよりますけど、多分この方は気にならないタイプでしょう」

吉川　「いえ、水じゃなくて」

藤村　「お湯でも平気ですよ」

吉川　「あれ？　ボクが気にし過ぎなのかな？　エロいってのは大丈夫なんですか？」

藤村　「あー、エロいっていうのは、ただの属性ですから。エロいからと言って生きてる人間に対してなにかアクションを起こすようなことはないんですよ」

吉川　「そういうものなんだ。ただエロいだけ？」

藤村　「めちゃくちゃエロいだけです」

吉川　「言い方が気になるんだよな。めちゃくちゃエロいやつなんて人生で会ったことないもの」

藤村　「もし心配ならばこちらの方を紹介させてもらいますけど」

吉川　「あ、お祓いとかですか？」

藤村　「いいえ。こちらの方、奥手の童貞男子の霊がついてる人で」

吉川　「なにか解決になるのか、それ！？」

暗転