最終関門

吉川 「クソォ! さすが最終関門だ。藤村、大丈夫か?」


藤村 「あぁ、俺は大丈夫だ」


吉川 「恐ろしい攻撃だぜ。『エゴ・カウンター』まさかこれほどとは」


藤村 「そうだな」


吉川 「ようやくここまでたどり着いたっていうのに、意識を保っているのは俺と藤村だけか」


藤村 「そうみたいだな」


吉川 「クッ……。こうしてる間にも襲いかかってくる」


藤村 「あ、大丈夫? 水飲む?」


吉川 「まさか今まで能力を使ってきたことへの罪悪感が具現化して襲ってくるとは。しかし、これを乗り越えなければ俺たちは真の能力者としての資格はない。なんとしてでも踏ん張るんだ!」


藤村 「そうだね」


吉川 「藤村! 平気か!?」


藤村 「まぁ、それなりに」


吉川 「流石にいつものように減らず口を叩く余裕はないか」


藤村 「いや、まぁ。やっぱりちょっと厳しい?」


吉川 「正直これが長く続けば俺も保たない。こうしてお前と話をしていないと意識が持っていかれそうだ」


藤村 「あ、そう。これ終わったら何食べに行く?」


吉川 「そうか。絶望には希望。今まで抱え込んだ罪悪感を散らすためには、未来のことを考えるってことか。さすが藤村」


藤村 「あ、うん。でもちょっと今俺金ないわ」


吉川 「そんな心配してる場合か! うわっ! ふぅ、危なかった」


藤村 「水飲む?」


吉川 「水ばっかり勧めるな。なんだ? お前の方は大丈夫なのか?」


藤村 「うん? すごい来てるよ? もう、結構大変な感じ。罪悪感がね。大変だから」


吉川 「きりがない! 一人で立ち向かわなきゃならないってのが余計に苦痛だぜ」


藤村 「なんかこっちでできることとかある?」


吉川 「お前はお前で必死だろ! 無理するな!」


藤村 「そ、そうだね。来てるからね。いっぱい」


吉川 「いっぱい? 数が多いのか?」


藤村 「あ、違う。デカいの。すごいデカいのが」


吉川 「デカい?」


藤村 「デカくもないけど、印象がデカいっていうか」


吉川 「まぁそれぞれ違う姿なのかも知れないな」


藤村 「そうだよ。多分俺とお前のは全然違うんじゃないかな。そっちはどんな感じなの?」


吉川 「見た目は天使のような神々しさだ。しかし見た目に反して攻撃の手数がえげつなすぎる」


藤村 「わかるー。そういうのが来るよね。いっぱい。あ、いっぱいじゃない。個別で」


吉川 「本当にお前戦ってるのか?」


藤村 「俺? 当たり前だろ。ぐわぁ! 今やられた! ビームで!」


吉川 「ビーム?」


藤村 「ビーム的な打撃! もうビームかと思ったくらいの目にも止まらぬ打撃! ちょっと俺のことはいいから自分のに集中しな」


吉川 「いや、俺の方はどうやら片がついたみたいだ。少し落ち着いてる」


藤村 「俺もちょうど! まさに今さっき!」


吉川 「と思ったら第二弾のお出ましか……」


藤村 「お出ましたなぁ! 第二弾がよぉ。こいつは厳しいぜ」


吉川 「いや、気のせいか?」


藤村 「だなぁ。気のせいだったか。お出まさなかった感じかな」


吉川 「本当にお前喰らってた?」


藤村 「なにが?」


吉川 「なにがって『エゴ・カウンター』。今まで能力を使ってきたことの罪悪感が具現化して襲ってくる攻撃」


藤村 「喰らってたよ? もう相当喰らってたよ。5段階評価で5喰らってたよ」


吉川 「まぁ、喰らわないってことはないか。最終関門だもんな。しかしこれを乗り越えたおかげで腕に刻印がくっきりと現れたぜ」


藤村 「なにそれ。刻印?」


吉川 「お前も自分のを見てみるがいい。これが攻略の証だ」


藤村 「あー、そう言えば出てるっぽいな。ちょっとさっき痛痒かったし」


吉川 「本当に出てるか?」


藤村 「出てる出てる。出まくってる」


吉川 「ちょっと見せてみろよ」


藤村 「え? いや、あの。それは恥ずかしいから。親しき仲にも礼儀ありだし」


吉川 「別にそんなに嫌がるならいいけど」


藤村 「これ、もし刻印なかったら最終関門はどうなるんだろうな。もしだよ? 俺はあるけど」


吉川 「そんなやつに能力者の資格はないだろ。罪悪感がゼロなんだよ? とにかく先に進もう」


藤村 「ちょっと待って。これはあの、俺の意見というより一般論として聞いて欲しいんだけど。罪悪感って何だと思う?」


吉川 「お前……。まさか?」


藤村 「そうやって疑うのよくない。仲間を疑うだなんて、その行為に罪悪感を感じるべきだよ!」


吉川 「クソォ、また来やがったか!」


藤村 「加勢するぜ!」


吉川 「どっちに!?」



暗転

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