チートスキル

吉川 「どうやらあなたもチートスキル持ちのようですね」


藤村 「やはりキミも」


吉川 「どうです? こんな状況だ。手を組んだ方がいいと思いません?」


藤村 「こちらは初めから争うつもりはない。ただ、どうしても他のものとは違うからあまり目立ちたくないんだ。わかるだろ?」


吉川 「わかります。お互いにここまで苦労してきたようですね」


藤村 「正直、この気持ちが共有できるだけで精神的にも救われたよ」


吉川 「私もです」


藤村 「それでだ。聞いていいか?」


吉川 「私のチートスキルですか? 無限MPです。実は無限ではないのですが、マナ回復力が通常の上限である40を超えて65535になっているために瞬時に全快してしまう。実質魔法の使い放題となってます」


藤村 「なるほど、それでか。色々と腑に落ちた」


吉川 「あなたのチートスキルも聞いていいですか?」


藤村 「教えない訳にはいかないだろ。俺のチートスキルは、キミの言い方で言わせてもらえば無限耳ピクだな」


吉川 「無限耳ピク? 聴覚に関するチートスキルですか?」


藤村 「惜しいな。耳がピクピクできるんだ」


吉川 「耳がピクピク。それで?」


藤村 「通常の仕様ではできないだろ? だが俺はそれができる。しかも体力の消耗無しで。どんな状況でもピクピクできるってわけさ。もちろん戦闘中でもだ」


吉川 「……それをしてなにが?」


藤村 「なにが? キミの無限MPと似たようなもんさ」


吉川 「似てないと思いますけど」


藤村 「そりゃ見た目は変わらないさ。だから我々も一般の冒険者と同じように生きていける。くれぐれも目立たなければな」


吉川 「耳ピクピクは一般の冒険者とさして変わらなくないですか?」


藤村 「おいおい、そんなわけないだろ。いたか? 今まで耳がピクピクできるやつが」


吉川 「いや、知りませんけど。気にもしてないと言うか。え? なに? なんでそのチートスキルなんですか? あの、チートスキルってこの世界に入る時に選べましたよね?」


藤村 「なぜか、な。俺もその辺の仕組みはよくわかっていない。正直、この世界はどこまで人為的に作られて、俺たちは何のためにここにいるのかもわからないんだ」


吉川 「それは、まぁ、わからないですけど。選べた中で耳ピクだったんですか?」


藤村 「そうだが? どういう意味だ?」


吉川 「いえ、耳ピクでどうしようと思ったんですか?」


藤村 「どうって、面白いなと思ったよ。なんだその奥歯に物が挟まったような言い方は」


吉川 「面白い、だけですか?」


藤村 「じゃあ言わせてもらうが、無限MPのなにが面白いんだ? 俺にはセンスの欠片も感じないけど?」


吉川 「面白いとかじゃなくて。便利だから……」


藤村 「一度でもウケたことあるのか? 無限MPですって言って! 俺は笑えなかったよ?」


吉川 「ウケとか考えてないんで」


藤村 「じゃあなんで選んだんだよ! わざとつまらないのを選んだの? あえて逆張り、みたいな? そういうやつが一番面白くないんだよ!」


吉川 「面白さのみで? そこに全ベットしたんですか? これから未知の世界で生き抜くのに」


藤村 「だからこそ、面白さだろうが! 特に耳ピクは言葉が通じなくてもウケるんだよ! 知らない世界で一人で生きる気だったのか? まず優先すべきはコミュニケーションだろうが」


吉川 「その観点は正直ありませんでした。つい効率重視の考えをしてしまって。自分の狭量さが恥ずかしいです」


藤村 「まぁ、それだけの力があれば傲慢にもなるだろうな。これでも見て落ち着け」


吉川 「あ、耳ピク」


藤村 「どうだ?」


吉川 「しょーもなっ!」


藤村 「笑っちゃうだろ?」


吉川 「笑っちゃうけども!」


笹咲 「どうやらあなたたちもチートスキルを持ってるようですね」


吉川 「何者だ? ひょっとしてあなたも?」


笹咲 「そう。このボクのチートスキルは無限アクメ!」


吉川 「AVのタイトルのやつ、世界観違いすぎる!」


藤村 「は、話を聞こう!」


吉川 「そして前のめり!」



暗転

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