禁止

吉川 「じゃあ、はじめって言ったら英語禁止ね」


藤村 「ちょっと待って。今のうちに一日分の英語を言っておくから。マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ」


吉川 「一日にそんなに言うの? その言葉のみを?」


藤村 「他はだいたい日本語でいうから」


吉川 「そうなんだ。サミュエル・L・ジャクソンみたいなやつだな」


藤村 「よし、大丈夫。いける」


吉川 「じゃあ、はじめ!」


藤村 「……」


吉川 「でもなんかすごい暑いよね」


藤村 「……」


吉川 「今年って梅雨ってあった?」


藤村 「……」


吉川 「なんか水害みたいのはあったけど、東京の方は全然だよな」


藤村 「……」


吉川 「ちょっと、一旦止めよう。なんかそれは違わない?」


藤村 「止まった? 今、止まってる?」


吉川 「止まってるけどさ、それは違わない?」


藤村 「英語喋ってないよ」


吉川 「英語もそうだけど喋ってないじゃん。ゲームの趣旨を考えてよ」


藤村 「英語喋らなければいいんでしょ?」


吉川 「喋りそうになるのを回避するところに醍醐味があるんでしょ! 何も喋らないを選ばれたらゲームとして楽しくないし、俺が独り言言ってるヤベえ奴みたいじゃん」


藤村 「寝ないで考えた必勝法なんだけど」


吉川 「必勝法を持ち込まないでよ。こういう雑な遊びに。皆でワイワイやるのにガチ勢が混ざってきたら冷めるじゃん。ナイトプール来ちゃった陰キャかよ」


藤村 「わかった。次は頑張る」


吉川 「本当にわかった? じゃ、いくよ」


藤村 「あー、ちょっと待って。マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ、マッザファッカ。はい、いいよ」


吉川 「そんなに貯まった? この短時間でマッザファッカ言いたい欲が。怖いな」


藤村 「念のためね。出し切っておかないと」


吉川 「じゃあ、はじめ!」


藤村  バシッ


吉川 「いてっ! なに!?」


藤村  ドンッ


吉川 「痛いって! ちょっとやめて」


藤村  パチンッ


吉川 「ちょっと! 一旦止めよう! なし! 止めて!」


藤村 「今、止まってる?」


吉川 「止まってる、じゃないよ。黙って殴るのダメじゃない?」


藤村 「英語使ってないよ」


吉川 「そういう問題じゃなくて。黙るのがまずダメってさっき言ったのに。その上で暴力? ひどすぎない?」


藤村 「でも独り言言ってるヤベえ奴みたいではなかったよ」


吉川 「独り言言ってるヤベえ奴の方が幾分かマシだったよ! 一方的にやられて。怖いんだよ、黙って殴ってくるやつ」


藤村 「そもそも英語禁止ってルールが厳しすぎるんだよ。もっとオビスペーニョ語禁止とかにしろよ」


吉川 「使わなすぎて成立しないだろ。オビスペーニョ語。なんだよそれ、どんな言葉があるんだよ」


藤村 「それなら安心して話ができそう。言っても気づかないし。バレなければ犯罪もOKっていう頭のいい人たちがやってる理論と一緒」


吉川 「そんな最悪な理論ないだろ! 頭も倫理も性格もよくないよ、そんな人」


藤村 「じゃあ、ノリピー語禁止にしよう。これはひりつくぜぇ? うっかりマンモスとか言いたくなっちゃうから」


吉川 「ならないよ! ノリピー語、前時代の遺物過ぎて何も思い出せない。時代とともに色々ありすぎたせいだ」


藤村 「不倫とかな」


吉川 「それ別の人だろ! 雑に全部の罪を背負わせるなよ。それは多分してないんだよ。知らないけど」


藤村 「正直、俺もマンモス以外に何があったか思い出せないっピー」


吉川 「そのピーの使い方も多分間違ってる」


藤村 「あと禁止して引っ掛かりそうなものと言えば、敬語禁止とかどう?」


吉川 「あ、それは意外と盛り上がるかも。やってみる?」


藤村 「やってみるか」


吉川 「じゃあ、スタート!」


藤村 「マッザファッカ」


吉川 「うん。よく言うな、それ」


藤村 「マッザファッカ?」


吉川 「全部それで行けるの?」


藤村 「マッザファッカ!」


吉川 「スラムで生まれ育ったピカチュウみたいなってる」


藤村 「マッザファッカー」


吉川 「得意分野すぎるだろ。もう止めよう」



暗転

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