コーデ

吉川 「うっわ! お前も今日ボーダーかよ」


藤村 「そうだよ? なにが?」


吉川 「いや、見てわかるだろ。被ってるんだよ、俺と。色も幅も同じくらいだし、なんか双子コーデみたいになってるじゃん」


藤村 「双子コーデ?」


吉川 「古い言い方だとペアルックだよ。合わせたみたいな感じになっちゃってるじゃん」


藤村 「それってなにかまずいの?」


吉川 「まずいっていうか、気持ち悪くない? 男同士で」


藤村 「男同士だとまずいの?」


吉川 「男同士だとっていうか、別にそういうジェンダー配慮みたいな話じゃなくてね。ファッションに興味のなさそうなやつがコーディネート合わせた感じになると滑稽じゃない」


藤村 「でも全然違うと思うけど? だってお前のシャツは化繊含まれてるでしょ? ポリ85%混合くらいじゃない?」


吉川 「わからんけど? 素材の話? あんまり素材を気にしたことなかった。お前は人の着てる服の素材を気にしてるの?」


藤村 「お前が一緒とか言うからだよ。全然違うじゃん、俺の綿100%よ?」


吉川 「こういうのってパッと見じゃない? 素材が違うから全然違うって視点の人いるの? 問題は柄じゃない?」


藤村 「その感覚わからないなぁ。お前はダズル迷彩の駆逐艦とウルトラマンの三面怪人ダダを見て『まったく一緒だ、被ってる!』っていうの?」


吉川 「どっちもわからない。映像が思い浮かばない。なにそれ? 戦艦と怪獣?」


藤村 「駆逐艦と三面怪人だよ!」


吉川 「あ、ごめん。そこ大事なとこなんだ? 確かにそこまでモノが全然違うと違うって思うかも知れない。でも服っていう単位で言えば化繊も綿も一緒じゃない?」


藤村 「大雑把すぎない? じゃああの人もその人も服を着てるから一緒だ。被ってる! おや、あの人は被ってないな。オリジナルだな。とか思うの?」


吉川 「それは思わない。服は皆着てるし。その最後に出てきたオリジナルの人は逆に何なの? 着てないのはダメだろ。ただの不審者だよ」


藤村 「オリジネーター」


吉川 「オリジネーターって呼ばないよ。裸の人を。街で見かけないだろ、そのオリジネーターは。摘発されるやつだよ」


藤村 「俺にとっては全然別だと思うけどな。じゃ昨日はどうだったの?」


吉川 「昨日? は別に違わなかった? 気にならなかったけど」


藤村 「だって昨日もお前のシャツのプリントにFって描いてあったじゃん? 俺のもそうだったから」


吉川 「F? そんな柄着てた?」


藤村 「なんか『Lost but now found』みたいなの描いてあったよ?」


吉川 「あー、文章で? あったかも知れないけど、ちっちゃくだろ? わざわざ何描いてるかそんなの見る?」


藤村 「俺のシャツにも©藤子・F・不二雄って描いてあったから」


吉川 「それと? それを見て『あ、Fが被ってるな』って思ったの?」


藤村 「だから! 気づいたけど、別によくあることだから気にはしなかったよ。お前はいちいち被ってる! 双子コーデ! とか騒ぐから」


吉川 「同じじゃないでしょ。そんな重箱の隅をつっついて見つけたような同一ポイントとパッと見で同じようなボーダー着てるってのは」


藤村 「似たようなもんだろ! どうせお前はオダギリジョーと竹内涼真は顎にホクロがあるから一緒! とか騒ぐんだろ! クウガとドライブは全然違うんだよ!」


吉川 「何の話? 俺が気にしすぎなのか? なんかコーデ被ってて恥ずかしかったんだけど」


藤村 「素材もシルエットも全然違う服なんだから気にすることない」


吉川 「そうなのか。じゃあ、あんまり被りとか気にしないことにするよ」


藤村 「あ、でもあの人は被ってるな」


吉川 「え? どの人? 全然違うけど?」


藤村 「被ってない? ヅラ」


吉川 「おいっ! 指差すなよ」



暗転

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