ラスボス戦

魔王 「どうした、勇者。すでにボロボロではないか。そんな身体で我輩を倒すことなどできるのか?」


勇者 「マジでそう。無理なんだよ」


魔王 「まさか自覚しているとは。ならばなぜここまで来た」


勇者 「せっかく近くまで来たんだから、どうせだったら顔見ようかと思って」


魔王 「そんな上京した実家のお母さんみたいな動機でよく顔を出せたな」


勇者 「大変だったんだよ! ここまで来るのに。もう総攻撃だから。本当にやばかった。サキュバスとかがやばかった」


魔王 「そりゃ、固めるだろ。普通は。一応王なんだから」


勇者 「あなた一番強いんでしょ? だったらもう自分のみでいいじゃん。一番の実力者なんだからそれで負けたらもうしょうがないってならない? はっきり言って、今この俺が倒れたら魔王にやられたんじゃなくて雑魚にやられたってことになるよ? そっちの方が評価上がっちゃうからね? 魔王なんかより全然ヤバかったってことになるから」


魔王 「違う! この権力とかも含めて王の力なの! コミコミで!」


勇者 「卑怯さも込みでね。主に卑怯さで勝つってことね。実力じゃなくて、性格の悪さがとにかくすごいからってことね」


魔王 「性格はそんなに悪くないよ! 割と部下にも慕われてる! だからみんなこの我輩を守ったんだろ!」


勇者 「あんな部下たちに慕われて嬉しい? あいつらも相当だぜ?」


魔王 「そういうこというなよ! 我輩のことは悪く言ってもいいけど、部下たちは頑張ってただろうが!」


勇者 「イボの先から変な汁出まくってるやついたぜ?」


魔王 「見た目のことで言うなよ! うちはそういうやつも採用する多様性を大切にしてるんだよ!」


勇者 「そもそも実力があるってのも怪しいんだよな。本当に一番実力があるならそれを誇示するためにもピンで来るでしょ? 言っておくけどさ、俺がここで勝ったら魔王マジで印象なかった、道中の中ボスの色違いみたいな雑魚の方が断然ヤバかったって言うからね? もう文書で残すよ?」


魔王 「文書で? やること陰湿じゃない?」


勇者 「どっちが!?」


魔王 「どっちって、魔王は多少陰湿でもキャラ的に皆納得してくれるだろ!」


勇者 「王なのに? 正直俺はあんたの名前もちゃんと覚えてないよ。サキュバスの方が全然印象深い。武勇伝語るにしてもサキュバスの部分しか話さないと思うよ」


魔王 「サキュバスの印象深く受けすぎだろ! あいつはそんなに実力的には強くないよ! 変化球キャラだよ!」


勇者 「出現率高い地域に通ったから」


魔王 「何通ってるんだよ! 経験値的にももっと効率いいところあるだろ!」


勇者 「お前に関係あるか?」


魔王 「この世界の事は全部我輩に関係あるんだよ!」


勇者 「え? 見てたの?」


魔王 「見てはないよ! なに恥ずかしがってるんだよ! 何をやってたんだよ、サキュバスと!」


勇者 「ぼ、冒険だよ」


魔王 「そんなグラビアアイドルの煽り文句みたいなをしてるんじゃないよ!」


勇者 「でももうマジでヘロヘロだから。ゲロ吐きそう。こんなゲロ吐いてるやつ倒して楽しい?」


魔王 「楽しみ目的でやってないんだよ! こっちはこっちで命がけなんだから!」


勇者 「雑魚が厳しすぎるんだよなぁ。はっきり言って限度があるよ。笑えないレベル」


魔王 「笑わそうとしてないよ! 『こんなに敵いてマジ受けるwww』みたいなノリで魔王討伐に来るやつに負けたくない」


勇者 「一回ちょっと休ませてくれない? それでやったら、正々堂々ってことになるじゃない?」


魔王 「魔王城を宿屋扱いするの? 別にこっちは正々堂々じゃなくてもいいんだよ!」


勇者 「まじで一回休めば楽になるから。奥の方で」


魔王 「メチャクチャ図々しくない? 魔王城の奥の方は部下のモンスターも入れないものなんだよ?」


勇者 「なんにもしないから。休むだけ」


魔王 「合コン後にラブホの近く通ったやつの言い草だよ、それ」


勇者 「弱いから。雑魚より弱いから怖いんだ? 実力あるって言ってもね、その程度か」


魔王 「わかったよ! 一回だけだぞ! もうそのあとはなんの言い訳もなしだからな! 実力勝負だから!」


勇者 「あー、助かった。サンキュ。あとできればサキュバス呼んでもらえない?」


魔王 「サービスじゃねえんだよ!」



暗転

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