1000回

藤村 「我々はいつまでこんなことを続けなきゃならないんですかね?」


吉川 「しかたないだろ」


藤村 「だってもう1000回ですよ? 1000回も痴態を演じ続けて。気が狂いますよ」


吉川 「文句を言ったからって辞められるわけじゃないんだ。黙ってやるしかないんだよ」


藤村 「だいたい本当にいるんですか? 観察者なんて」


吉川 「いるよ。いるとでも思わなきゃやってられないだろ」


藤村 「本当に観察者がいるなら、なんらかのリアクションなりあるはずじゃないですか? もう1000回目ですよ?」


吉川 「余計な期待をするな。辛くなるぞ」


藤村 「もし観察者なんてものがいたら、そいつはきっと大馬鹿野郎ですよ!」


吉川 「お、おい! あんまりそういうことを言うな」


藤村 「だってそうでしょ!? 毎日毎日俺たちが右往左往するのを見て薄笑いを浮かべて。多分、ろくな人生を歩んでませんよ。人の役に立つようなことなんて何一つせずに、ネットで見下す相手を探して。そうやって惨めな自分を慰めることだけが生きる糧なんですよ!」


吉川 「ちょっと待って。さすがに言い過ぎだな。そんなことはないよ? 立派な人かもしれないじゃない」


藤村 「そんなわけないじゃないですか! もし立派な人なら、こんな1000回も頑張ってる俺たちになんらかのリアクションがあるはずじゃないですか!」


吉川 「忙しい方かも知れない。心の中ではものすごくエールを送ってくれてる方なのかもしれない。恥ずかしがり屋さんってことも考えられるぞ」


藤村 「なにをチラチラ気にしてるんですか? どんなに忙しくても『応援する』ボタンをワンクリックするくらいはできますよ。そんなことすら気の回らない愚鈍なクズに決まってます!」


吉川 「え? なに? 具体的過ぎない? 何のことを言ってるんだ? どこのレベルの話をしてるの? それ、俺たちが触れちゃいけないやつじゃないの?」


藤村 「別にレビューを書いてくれとか、応援コメントを頼むとか、そんなことを臨んでるわけじゃないですよ! 観察者程度の知性じゃちょっとしたコメントやレビューでも頭の程度が知れちゃいますしね。ただ星3つ評価をするくらいはバカでもできるでしょ? それすらしない。怠惰。親の躾がなってない!」


吉川 「一回止めよう。思ったよりもやばい領域に踏み込みすぎてる。一応言っておくけど、それはあくまで藤村の意見だよね? 俺はもちろん関係ないし。他の誰かを代表して意見してるわけでは決してないんだよね? ないよね?」


藤村 「なにビビってるんですか。そもそも観察者なんているわけないんですから、気を使う必要なんてないでしょ」


吉川 「いや? 俺はその流れには乗りたくないなぁ。俺は観察者はいると思うし、人間的にもとっても優れてると思うから。文章でのユーモアを解する非常に高い知性を持っているだろうし、そもそも我々を見つけて見てくれているというだけでセンスがいい。最高! 徳が高い! モテるだろうなぁ!」


藤村 「そんなまともなやつが見ますか?」


吉川 「見るよ! 見てくれてるよ! 少なくとも俺はそう信じてるから!」


藤村 「そんな人だったら、今までだってSNSで『このテキストのコント最高! 面白いし1000回も書いてる。まさに偉業! 多くの人に知って欲しい!』みたいな投稿をしてバズらせてるはずじゃないですか? どうせフォロワーの質も低いしネットでも爪弾きにされてるんですよ。悪口ばっかり書いてるから」


吉川 「フォロワーの質とか言うのは止めよう? それはもう飛び火したら収集つかなくなるから。それにいつかしてくれるかもしれないだろ!? 今はひっそりと伏してるだけでいずれ龍になり天に登るような大人物かも知れないじゃないか! 決めつけるのは良くない!」


藤村 「俺は本格的なクズだと思いますけどね。あと自分を頭がいいと勘違いしてるから、気の利いたことを言おうとして毎回失笑を買ってるだけなのに、同調してくれる同じレベルのバカたちをセンスいいやつだと思ってそう」


吉川 「一回黙って。広範囲に無差別に刃を投げつけないで!」


藤村 「多分ろくに風呂も入ってない。『常在菌が~』とかバカの屁理屈こねて」


吉川 「いいから! わかった。お前の意見はわかった。あくまでそれはお前の意見として聞く。で、とりあえず終わりにしよう?」


藤村 「そんなんでバカが収まりますか? オチがないとかクソみたいなこと思うんじゃないですか?」


吉川 「大丈夫! わかってくれる! 頭いいから! もうとんでもなくハイセンスだから! 最高のオチだって思ってくれる。そのくらい冴えてる! 最高の人間だから! いつもありがとうございます。1000回もやれてるのは観察者の方のおかげです。我々頑張っております。今後とも宜しくお願いします!」


藤村 「こんなもん見てる暇があるなら、もっと自分の人生マシなものにしろよ!」



暗転

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