歌詞

藤村 「J-popの歌詞ってバカでも書けそうじゃない?」


吉川 「よくそのさり気なさで可燃性の高い発言ができるな」


藤村 「だから俺も一山当てようと思って」


吉川 「そう思ってるやつは掃いて捨てるほどいるんだよ。でも実際に山にたどり着いたやつほぼいないんだから」


藤村 「なんかいける気がするんだよ」


吉川 「頼むから一番最初の言葉だけ撤回してくれないか? 俺も巻き添えを喰らいそうで気が気じゃない」


藤村 「決して挫けない心で誓うよ」


吉川 「誓うなよ。撤回しろって言ってるんだよ。え? もう歌詞に入ってる?」


藤村 「素直な気持ちを伝えたい」


吉川 「歌詞なの? もうそれは歌詞なのね? 歌詞に入る前に一旦ごめんなさいしよう? 言い過ぎだから」


藤村 「あの日のことは間違いだったと思いたくない」


吉川 「すごいアンサー入れてくるな。それで上手いこといかせようと考えるんだ」


藤村 「上手く笑えない俺を」


吉川 「これは下手に俺がなにか言わない方がいいな」


藤村 「何も言わずに抱きしめてくれた」


吉川 「すべて呼び水になってる。一切謝らないくせに」


藤村 「過ちだらけの俺を」


吉川 「過ちは認めてるんだ。謝らないけど」


藤村 「水戸まで一緒に行った」


吉川 「水戸!? 認めるで歌詞出なかったかぁ。急に水戸が出てきた。結構早めに破綻したな」


藤村 「さぁ羽ばたくんだ」


吉川 「破綻から羽ばたく拾ったのは良かったけど、水戸の駅前にいる鳩みたいな歌詞になってきたな」


藤村 「LaLaLa……」


吉川 「もう限界っぽいな」


藤村 「すべて投げ捨てて一から旅を始めよう」


吉川 「あぁ、収集つかなくなっちゃったんだ。水戸行った時点でもう歌詞としては終わりだもんな」


藤村 「瞳を閉じて」


吉川 「目をつぶれってことかな? ちょっとしたミスは大目に見ろと」


藤村 「さぁ飛び出そう」


吉川 「目を閉じたまま飛び出すの危ないな。絶対事故に合うな」


藤村 「どんな困難にぶつかっても」


吉川 「事故にあってるな。目を閉じてるから。言わんこっちゃない」


藤村 「高く舞い上がれ」


吉川 「ものすごいふっ飛ばされてるじゃん。え? トラック? トラックに跳ねられた歌?」


藤村 「青い空に手を伸ばして」


吉川 「滞空時間が長い。どれだけふっ飛ばされたんだ」


藤村 「胸が張り裂けそうさ」


吉川 「助かる見込みがない。J-popの歌詞史上最も重症じゃない?」


藤村 「心震える」


吉川 「まだ脈はある」


藤村 「時を止めてしまいたい」


吉川 「あぁ、もたなかったか」


藤村 「天にも登る気持ちさ」


吉川 「もう気持ちだけじゃすまないだろ、それは」


藤村 「情熱の炎でこの身を焦がして」


吉川 「火葬まで?」


藤村 「骨の髄まで愛して」


吉川 「急に演歌に!? なんの歌なんだよ! 事故って死ぬ実況してただけじゃない」


藤村 「もう一度やり直せるなら」


吉川 「また? しつこいな」


藤村 「その手を繋いで一人じゃない」


吉川 「登場人物が増えたな」


藤村 「支え合う仲間がいるから」


吉川 「もう誰も死なないといいな。事故だけには気をつけて」


藤村 「喜びも涙も分かち合い」


吉川 「凡庸になってきた」


藤村 「いつだって未来を一緒に夢見た俺とお前」


吉川 「仲間って言ってた割に二人なのか」


藤村 「と大五郎」


吉川 「大五郎の歌じゃねえかよ! J-popじゃないよ、それは!」



暗転

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