隠れ

吉川 「うわぁ、久しぶりに来たけど、お前もうちょっと部屋片付けろよ」


藤村 「あ。見っかっちゃった?」


吉川 「なんだよ、見つかったって。これ空き缶とか捨てろよ。いつからだよ」


藤村 「さすが目ざとい! まずは一つ」


吉川 「なにが? 空き缶? ゴミだろ」


藤村 「これもおもてなしの一つだから。ほら、TDLあるだろ?」


吉川 「TDLってあのランド? 同列に並ぶものはこの部屋には一っつもないよ!」


藤村 「隠れミッキーってあるじゃん。あれみたいなもので部屋にこっそりと置いてあるの」


吉川 「なにを!? 空き缶を?」


藤村 「隠れゴッミー」


吉川 「隠れてないしゴッミーってなに!? ゴッミー、言いづらい。撥音の後のミーは全然力がこもらない。『ゴッ』の力強さを全然受け止められない。ゴッミー、言う度に口の中のエネルギーがロスして気持ち悪くなる」


藤村 「実は他にも色々ある」


吉川 「ワクワク感出すなよ! だらしなさをレジャーとして活用しやがって。これも! お菓子の袋!」


藤村 「いいよ。写真撮って上げても」


吉川 「ゴミなんだよ。ゴミと自撮りしてる写真流れてきたらフォロー切るよ」


藤村 「ゴミと映えって相性がいいからな」


吉川 「ハエだろ! もうこれからの季節、コバエが無限に発生するぞ」


藤村 「キャストの方々もこれから増えてくるんだよね」


吉川 「キャストって呼んでるの? なんのもてなしもしなそうなコバエを。ただただ煩わしいだけのコバエを」


藤村 「もう夏場なんかパレード状態だからね」


吉川 「それをパレードと容認できるお前の神経、無敵すぎるな。ほら、ここにも隠れゴッミー。あぁあ、変なシミもできてる」


藤村 「あ、それは違うやつだから」


吉川 「なんだよ、違うやつって。全部ゴミなんだよ。違うとか違わないとかのジャッジが成立する空間じゃないんだよ」


藤村 「でもそれは違うやつだから」


吉川 「だから違うって何!? これは?」


藤村 「お、それは隠れゴッミーです! こっちの角度から見ないと見つけられないやつ」


吉川 「本当にレクリエーションとして成立してると思ってるの? 微妙に見えづらい隠し方しやがって」


藤村 「あとあそこにもあるんだけどなぁ。気づくかなぁ?」


吉川 「いや、そもそもゴミだらけなんだよ。これもゴミだろ。これも!」


藤村 「あ、それは違うやつ」


吉川 「違うやつはないんだよ! お前の思い込み一つだろ」


藤村 「それはマジで違うから触らないで」


吉川 「シリアスな顔をするなよ。じゃあ他のゴミはなんなの? 触っていいって言われても別に触りたくないけどな!」


藤村 「あー。近い! 一番すごいやつに近い! ヒントは匂い!」


吉川 「匂いで見つけたくないんだよ! 隠れミッキーを匂いで探知するやつ見たことあるか? コンセプトがズレまくってるんだよ」


藤村 「変な匂いじゃないから。どっちかというと汗臭系」


吉川 「それを変な匂いっていうんだよ! どっちかというと、ってどれどどれのどっちかを比べたんだよ。腐ってるのも体臭も両方もってのほか。別け隔てなく最悪なんだよ」


藤村 「まぁ、あくまで隠れゴッミーは見つけた人だけ楽しいっていうだけで、強制じゃないから別にいいんだけどね」


吉川 「そういう風に引かれると逆に気になるな。ここか。この思わせぶりなシール」


藤村 「あ、それはマジで本当に違うから。触らないで!」


吉川 「だから何が違うんだよ。何このシール、カッピカピで全然きれいに取れない」


藤村 「剥がしちゃったの? 御札」


吉川 「御札? なんで御札が。あれ? このシミ、さっきと形変わってない?」


藤村 「それはだから違うやつだから」


吉川 「違うやつってお前。え? なに?」


藤村 「あとはそれ、お前の家まで連れて帰ってくれ」


吉川 「急にホーンテッド・マンションみたいなこと言うなよ……」



暗転

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