行列のできる

吉川 「いやぁ、こちらものすごい行列です。やはり規制も緩和されて人々もこういうところに来るのを求めていたのでしょう。ではお話を伺ってみたいと思います。こんにちは」


藤村 「どうもこんにちは」


吉川 「すごい行列ですね」


藤村 「はい。ありがたいことです。ようやくこうやってまた行列が戻ってきて、我々も嬉しい悲鳴を上げています」


吉川 「こちらでは並んでいる方々にもサービスなどをされているそうですが?」


藤村 「はい。この並んでいる時間も有効に使っていただこうと、物販などもしています。特にこれから気温が上がって暑くなってくると、暑さ対策のグッズなどがかなり売れます」


吉川 「なるほど。具体的にはどんな?」


藤村 「まずはタオルですね。これはタオルとして使えるのはもちろんのこと、応援グッズとして振り回したりもできます」


吉川 「そうですか」


藤村 「シーズン毎にデザインも変更してますので、集めるのが楽しいと好評いただいております」


吉川 「他には?」


藤村 「そうですね。保冷剤、ミニ扇風機などはかなり売れています」


吉川 「ちなみにこれは?」


藤村 「これはトイレですね」


吉川 「トイレ? というと? まさか簡易トイレじゃないですよね?」


藤村 「違います違います。さすがに行列に並びながらってのは無理ですよ。これはトイレに行くのに少し行列を離脱して戻って来る間スタッフが変わりに並んでおくというサービスです」


吉川 「それを販売してるんですか?」


藤村 「以前はこういうのは善意でやってたんですが、どうしてもトラブルの種になりやすいのでしかたなく有料化させてもらいました。そうするとクレームを付ける方もいなくなりましたね」


吉川 「なるほど。そういうことがあるんですか」


藤村 「なにぶん、人がやってることですから。行列は楽しく並んでいただかないと」


吉川 「この1UPっていうのは?」


藤村 「これは特別な商品となってまして、数量限定で販売させてもらってます。購入された方は一人分前に並べるという権利です」


吉川 「え? 一人抜かすってことですか?」


藤村 「はい。これにより行列中もより緊張感が出てきます」


吉川 「そういうのアリなんですか? なんかトラブルのもとになりそうですけど。ちなみにこれいくらなんですか?」


藤村 「1万円です」


吉川 「しっかりした値段! 売れるんですか?」


藤村 「売れる時にはもう飛ぶように売れます」


吉川 「悪どい。数量限定ならしょうがないのか。数量ってどのくらいなんですか?」


藤村 「一日につき8000口ですね」


吉川 「ほぼ無限。売り切れることないでしょ、その量。えらいアコギな商売を。このキラキラしたリムーブってカードは?」


藤村 「これは誰か一人気に入らないやつを行列から排除できるカードです」


吉川 「いよいよ地獄じみてきたな。これいくらなんですか?」


藤村 「これは20万円です」


吉川 「買う人いるんですか?」


藤村 「それが結構出るんですよ。うちの主力商品と言ってもいい」


吉川 「いや、行列の部分で利ざやを稼がれても」


藤村 「だいたいトラブルは言ったい言わないとか、ぶつかったとかそういうしょうもない揉め事なんですよ。そうなってくると第三者でも判断はできないので、もう当事者同士で金で解決してもらおうと採用しました」


吉川 「行列に並ぶというストレス環境がそうさせてるんじゃないですか?」


藤村 「日本人は行列に並ぶのが好きだから、もう我々としてもこればっかりは制御できないので」


吉川 「そういうもんですか。行列が戻ってきたのはいいですけど、様々な人間模様もあるようです。それではいよいよ中の方に入ってみましょう」


藤村 「どうぞ」


吉川 「あー、中はエアコンが効いていて涼しいですね。こちらは何をされてるんですか?」


藤村 「はい。こちらでは住民票を発行したり、各種届出などの手続きをしています」


吉川 「役所じゃねえか! 行列を作らせるなよ!」



暗転

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