論理クイズ

藤村 「では論理クイズです。この中で何人かは嘘を言っていて、何人かは本当のことを言っています。嘘を言っている人を当ててください」


吉川 「わかった。やったことある」


藤村 「ではAさん、お願いします」


A  「水素水で心も身体もスッキリ!」


吉川 「ちょ、ちょっと待って……」


藤村 「ではBさん、お願いします」


B  「コロナは風邪!」


吉川 「ちょっと待ってよ! 待って! 知ってるのと違う!」


藤村 「ではCさん、お願いします」


C  「私の前の人は少なくとも一人嘘をついています」


吉川 「それだよ。そういうの! やっと流れきたよ」


藤村 「ではDさん、お願いします」


D  「中国はすでに地震兵器を完成させてる!」


吉川 「またおかしくなった! 逆にCさんなんだったんだよ。一人だけ真面目!」


藤村 「ではEさん、お願いします」


E  「この中の二人はすでに洗脳されていて自我を失っています」


吉川 「怖いよ! なんだよ、その告発」


藤村 「さぁ、ではこの中で嘘をついているのは誰でしょうか?」


吉川 「いや、嘘とかじゃないだろ。そういう問題じゃなくない?」


藤村 「全員真実を言っているということでよろしいですか?」


吉川 「それは全然よろしくないよ。まったくそうは思わない。こういうのって内容で嘘かどうかを判断するのではなくて、お互いに言及している整合性で判断するものなんじゃないの?」


藤村 「つまり、Dさんと中国との関係ということですか?」


吉川 「違うよ! 危ういな! その話題をあんまり突っ込むなよ! そうじゃなくて、お互いに嘘か本当かを担保するような言及から嘘を判断していくんだろ?」


藤村 「言ってることがよくわからないですね」


吉川 「そんな難しいこと言ってないよ! 論理クイズ出そうという人間ならこのくらいのロジックわかれよ!」


藤村 「ヒント欲しいですか?」


吉川 「いや、別に難易度が高すぎてわからないって言ってるんじゃないんだよ。難易度は底だよ。最底辺だよ。わかるけど、論理クイズってこういうものじゃないでしょって話なんだよ」


藤村 「中国が嘘をついてるってことですか?」


吉川 「おい、お前! 本当に危ないからしゃべるな! もうなんにも喋るな」


藤村 「おっと、言論弾圧。まるで……」


吉川 「まるでじゃないんだよ! わかった! お願いだから触れないで。Cさんと話がしたい。Cさんだけが良心だよ」


藤村 「でもCさんは他人の嘘を告発するような人ですからね。人間的に信頼していいものかどうか」


吉川 「人間性の問題を論理クイズに持ち込むなよ。それを言い出したら全員ヤバイよ。まともな人間まだ一人も出てきてない!」


藤村 「多分AさんかBさんは、あとでCさんに対して報復をするんじゃないかと思われますけど」


吉川 「ゲームの中の話じゃないの? こういうのは本人の心からの主張じゃないだろ」


藤村 「つまり嘘であると?」


吉川 「そこに嘘か本当かのゲーム性を持ち込むなよ。余計にややこしいんだよ。本心じゃないことを言っていてもゲーム上は本当ということがあるだろ!」


藤村 「当局にそんな言い訳が通用すると思いますか?」


吉川 「当局って何!? いや、具体的に答えなくていい! ただ、なに!? そういうのが噛んでるならもうこのクイズ自体が怖い。絶対に答えたくない」


藤村 「さぁ、この中で嘘をついてるのは誰でしょうか?」


吉川 「もうその言い方も怖く感じる。最初のゲーム感覚の楽しさが失われてしまった」


藤村 「ここまできたらもう答えてもらうしかありません。もし拒否をするというのならこちらにも相応のやり方というのがあります」


吉川 「なんだよもう、何に巻き込まれてるんだよ?」


藤村 「さぁ、嘘をついてるのは誰でしょうか?」


吉川 「う、嘘をついてるのは誰もいません」


藤村 「よろしい。別室に連れていけ」


吉川 「なんだよ、別室って!?」



暗転

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