公用語

藤村 「来季より社内公用語をJK語にしたいと思います。これからの変化の激しい時代、JK語を使えればビジネスシーンでも他社に差をつけることができます」


吉川 「本当に必要ですか? そもそもJK語とは?」


藤村 「JK語をご存知ないですか? 主に女子高生が使う言語ですが」


吉川 「それはわかってるんですが、業務上必要なことでしょうか?」


藤村 「今の『業務上必要なことでしょうか?』をJK語にしますと『ゲーム上必ッピなの?』となります。これからもわかる通り、JK語を介することにより、今までよりもスピード感のあるビジネススキームを構築することができます」


吉川 「え? え? わからないですけど」


藤村 「失礼しました。ビジネススキームとは業務上の計画への取り組みということです」


吉川 「そっちはわかるんだよ。業務上がゲーム上になったら意味変わるでしょ。現場が混乱するとしか思えない」


藤村 「ちなみに『現場が混乱する』をJK語にすると『ちょ、クラブまぢアゲなんだけど~!』になります」


吉川 「それを言ってどうするの? おじさんたちが連絡で『まぢアゲなんだけど~』っていうの?」


藤村 「アガってないときには無理に言わなくても結構です」


吉川 「そういうことじゃなくて。なんでJK語なの!?」


藤村 「取締役会で持ち上がりまして」


吉川 「誰が稟議出したの? 英語ならともかく! 英語だって嫌だけど、JK語はもう何もかもわからないじゃないですか」


藤村 「なのでこれから講座なども用意しておりますので社員には積極的に活用してもらいたいと思います」


吉川 「数年後にはJK語廃れてるだろ。JKは3年で卒業しちゃうんだよ。世代入れ替わって継がれないだろ」


藤村 「そういった意見もありますが、我が社としてはJK語保存のためにも一役買いたいと文化的な投資の面もあります」


吉川 「会社でやるようなことじゃないんだよ。個人でやりなさいよ。社員を巻き込まないで」


藤村 「『社員を巻き込まないで』はJK語にすると『しゃちほこマッカートニー』になりますので以後よろしくお願いします」


吉川 「ならねーだろ! JKに『しゃちほこマッカートニー』って言って通じる? そもそも言う機会自体JKにはないだろ。何の意味があるんだよ!」


藤村 「バチギマってんでオケマル?」


吉川 「わからない。わかるための光明すら見えない。なによりわかりたいという気持ちが湧いてこない」


藤村 「『なにぶん決まったこととなのでご理解の程をよろしくお願いいたします』という意味です」


吉川 「言えよ! そう言え! 社員誰もJK語わからないんだよ!」


藤村 「未来の我が社の行く末を見据えての決断です。数年もすれば我が社にも現在のJKが入社してくる見込みですので、その時はこちらから迎え撃つ形になります」


吉川 「JKに対抗するために全社員が? その労力を仕事に回そうよ。JK迎え撃つことにリソース割いてる会社ないよ」


藤村 「取締役会でも身を切る決断でした。しかしこのくらい大きなナタを振るわなければ、このままでは我が社の行く末は危うい!」


吉川 「もう危ういだろ! なんでよりによってJK語なんだよ」


藤村 「ゆーて、いつメンがエグいおぢ講エンカしてまじウケなんでワラ。うちら病み入るんで意味無しほーいちカマしてみ!」


吉川 「わからないんだよ。そんなわけわからないことを了承できるかよ! 日本語で言え!」


藤村 「実は社内の多くの者がメッセージのやり取りなどでおじさん構文を使用しているというデータが上がってきまして。それに対して不快感を覚える若年の社員が多く、相殺するためにJK語の導入という運びになりました」


吉川 「それはやむなし~!」



暗転

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