アシスタント

吉川 「クイズ! ゴリゴリに答えましょう! こんにちは。司会の吉川です」


良子 「アシスタントの良子です」


吉川 「さぁ、はじまりました。クイズ! ゴリゴリに答えましょう! この番組は主にゴリラに関するクイズのみを競うという画期的なバラエティ番組となっております」


良子 「ええっ!? クイズってあの問題に答えるクイズですか? 画期的~!」


吉川 「なお優勝すれば豪華な賞品、そして全問正解するとなんと! 本物のゴリラと一日一緒に過ごせるという素晴らしい特典がついております」


良子 「すごーい! ということは、優勝者がこの中から出るということですね?」


吉川 「では早速第一問行ってみましょう!」


良子 「本当ですか? 第一問に行ってしまうだなんて信じられません!」


吉川 「あの、ちょっと」


良子 「えぇっ!? わ、私ですか?」


吉川 「リアクションがややズレてるな。いや、悪くはないんだけどね。盛り上げようとしてくれてる気持ちは伝わってくるし。でもなんかそこじゃないってところで驚いてる気がする」


良子 「あ、はい。すみませんでした」


吉川 「本当に心構えはいいと思う。細かいところだけどゴメンね」


良子 「わかりました。気をつけます」


吉川 「はい。では気を取り直していきましょう」


良子 「そんなぁ! 気を取り直すなんて聞いてないですよー」


吉川 「あ、うん。別にそこは流していいところじゃない? 気を取り直すか取り直さないかに関して興味を示してるお客さんがいると思う?」


良子 「でも気を取り直さないまま派のファンの方の気持ちの最寄り沿わないと」


吉川 「気を取り直さない派ってあるの? 番組を見ながら『この人気を取り直さないでドンドン落ち込んでいってほしいなぁ』って手に汗握ってる人が?」


良子 「多様性の時代なんで」


吉川 「まぁ、いるかもしれないけど。まず最大公約数のお客さんが喜ぶような形を提示しよう? まずはね。多様性は余裕が出てきてからでもいいと思うから」


良子 「わかりました」


吉川 「では早速第一問いってみましょう!」


良子 「いってみちゃうんですか!?」


吉川 「マウンテンゴリラの学名は……。はい、藤村さん早かった。問題の途中ですが。正解! そう、ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ。問題文の続きを読みます。マウンテンゴリラの学名はゴリラ・ゴリラ・ベリンゲイ。では、ニシローランドゴリラの学名は、という問題でした。見事正解です」


良子 「すごーい! 藤村さん、あんなダサい格好してるのに正解するなんて!」


吉川 「いや、ちょっと良子さん。それはよくないよ!」


良子 「え? 正解したのすごくないんですか? 褒めないほうが良かったですか?」


吉川 「褒めてないでしょ。褒めてたとしたら下手すぎるでしょ。あんな言い方されたら傷つかない?」


良子 「でも顔のことには触れませんでしたよ? 最悪に気持ち悪い顔してるけど、そういう直せない部分を指摘するのはよくないことだから」


吉川 「配慮あったんだ。あれでも」


良子 「服は自分の意志でクソダサいのを選んでるわけですから問題ないじゃないですか? あえてこの場にクソダサい服を着てきたことに触れないなんて可哀想かなと思って」


吉川 「そういう形で触れて欲しいと思って着てきてないと思うよ。もっと誰も傷つかずに楽しくなる方向性で盛り上げてほしいな」


良子 「わかりました。皆さん頑張って豪華な賞品を手に入れてください! ちょっと金出せば買えるようなものですが、目の色変えてなりふり構わず品のない姿をさらけ出して獲得して欲しいと思います。では第二問です」


吉川 「聞き捨てならないよ。それをスルーして第二問にいけないよ。なんか出場者全員惨めみたいじゃん」


良子 「では第二問に行く前にCMです。私たちにお金をくれるスポンサーさんの大切なお知らせですから心して見てください」


吉川 「そうだけどそれを強調して言わない方がいいよ」


良子 「この不景気の中、スポンサーさんもどうやって儲けたんだか、その金の流れも気になりますが、第二問いってみましょう!」


吉川 「せっかく今まで気にしてなかった人まで気になるようなことほじくり出さないでよ。第二問どころじゃないよ」


良子 「ええっ!? 第二問にいかないんですか!」


吉川 「もうリアクションいいよ。黙って笑ってるだけでいいから」


良子 「……ハンッ!」


吉川 「なんで鼻で笑うの?」



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る