怪盗

藤村 「この度は世界に二つと無い秘宝を怪盗に奪われることになってしまい、誠に申し訳ありませんでした」


吉川 「いくら頭を下げてもらっても秘宝は返ってくることはないんだよ! どうしてくれるんだ?」


藤村 「まさかあの怪盗がわずかな警備の隙を突くだなんて」


吉川 「なんで警備に隙ができたんだ? 君たちの職務怠慢じゃないのか?」


藤村 「いえ、世間を騒がせている大怪盗です。どれほど我々が入念な警備をしようとそれを上回ってくるのです」


吉川 「噂は聞いてるよ。だからこそ君たちに警備を依頼したんだがね」


藤村 「まさかちょうど我々が飽きかけた時間を狙うだなんて!」


吉川 「待てよ。飽きかけてたの?」


藤村 「はい。全然来ないから。限界だったので3人ほど休憩にいきましたし」


吉川 「飽きるなよ! なんで飽きちゃうの? 仕事なのに」


藤村 「この日の警備のために前々日から入念なシミュレーションを何度も繰り返してきました。それが仇となったようです」


吉川 「仇になるなよ。本番だろ!」


藤村 「シミュレーションの時は完璧でした。もう全員の集中力がピークに達していて蟻一匹通さぬという状態でした」


吉川 「なんでピークをシミュレーションの時に持ってきたの?」


藤村 「問題はそこじゃないんですよ! あの大怪盗というやつは、常に裏をかく!」


吉川 「そうかもしれないけど、お前らの問題が帳消しになるわけじゃなくない?」


藤村 「いいえ、実際に士気は十分でした。ただあまりにもシミュレーションが上手く行き過ぎたせいでその後打ち上げに行っちゃったのがマズかったみたいですけど」


吉川 「そりゃマズいよ。なんで打ち上げたの? 本番前に?」


藤村 「あれだけ完璧にこなして行かずにいられますか?」


吉川 「いられるだろ。そのくらいの我慢ができなかったか?」


藤村 「いいですか? いくら怪盗を相手にしているとは言っても、我々は超人じゃない。人間なんです」


吉川 「人間の中でもかなりダメ人間の部類じゃない?」


藤村 「ちなみにこちらが打ち上げの時の領収書です」


吉川 「なんだよこれ、支払わそうとしてるの? 失敗の原因になった打ち上げのを」


藤村 「どうお考えになるかはあなた次第です。しかしこの支払いも無視するとなると、今回はあの怪盗にやられっぱなしということになりますよ?」


吉川 「どういう理屈で? これは別に怪盗の差し金じゃないでしょ? 全然関係ないお前らの飲み食いでしょ?」


藤村 「今頃怪盗のやつこの状況を見てほくそ笑んでるでしょうね」


吉川 「お前ら怪盗と結託してるの? 別にこのくらいなら払ってもいいんだけど、態度が気に食わないんだよなぁ」


藤村 「結果としては無念ですが、もし再度機会があれば必ずやつの手から阻んでみせます。この敗北は無駄にはしません」


吉川 「まぁ、そういうならしょうがないけど。本来怒りをぶつけるべきは君たちではなく怪盗だしな」


藤村 「しかしこれまでの犯行によりやつの手口は見えてきました。むしろ早く次の予告が来ないかとすら思うくらいですよ」


吉川 「それは頼もしいな」


藤村 「できれば行きつけの店が和牛フェアをやってる内に来てもらいたいものです」


吉川 「打ち上げに対する期待が強すぎない? まず警備でしょ? 打ち上げはオマケなんだよね? それはちゃんとわかって言ってるよね?」


藤村 「もちろんですとも! あの怪盗を捕らえることこそ我々にとって最大の肴ですから」


吉川 「え? なに? また犯行予告が? おい君。来たぞ?」


藤村 「ふっふっふ。飛んで火に入る夏の虫ですな。今度こそはやつの最後だ。警備員を倍にしろ。そうだ、予約も倍の人数で。貸し切りでいい。人数多いから集まるの待たずに来た順で始めちゃっていいから! 平気平気、最後なんとなく締めれば」


吉川 「打ち上げの連絡メインでやってないか?」


藤村 「あ、来ます?」


吉川 「来ます、じゃねーよ!」


藤村 「まだわかんないですけど、都合つけば怪盗も来られるかもしれないですよ?」


吉川 「やっぱグルじゃねえか!」



暗転

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