誤解

吉川 「この度は、誤解を与えるような発言をしてしまい誠に申し訳ありませんでした」


藤村 「本当に反省してるんですか? なんですか、誤解って。受け止めたこっちの責任みたいに言わないでくださいよ。そもそもの発言が不適切だったとは思わないんですか?」


吉川 「……はい。言葉が足りずに、皆様にご不快な思いをさせてしまったことは大変申し訳なく」


藤村 「自分の発言に責任を持ってれば、誤解なんて言い訳はできないと思いますけどね? ご自身の影響力を考えたことはなかったんですか?」


吉川 「今回を機に、改めて気をつけたいと思います」


藤村 「あなたの発言。いいですか? あなたはこう言ったんですよ? 『前例を金科玉条のように崇めて改革を進める気概のない人たち』覚えてますか?」


吉川 「はい」


藤村 「なんですか? 金科玉条って!? これはつまり、キンタマのことでしょ?」


吉川 「いえ、それは誤解です」


藤村 「誤解じゃないんだよ! 聞いたことないよ、金科玉条なんて。キンタマのシャレた言い回しでしょ? キンタマみたいなやつらって意味でしょうが!」


吉川 「違います。誤解なんです。言うんですよ、金科玉条って。中国の故事が由来で」


藤村 「また誤解って。なんですか? そんな言葉を知らない我々を馬鹿にしてるんですか? お前らが低能だから誤解したと、そう言いたいんですか?」


吉川 「いえ。今後は気をつけます」


藤村 「あとこの発言ですよ。『疲れた時に食べるクイニーアマンは絶品』なんですかこれ? こんな下品な言葉を子どもたちに見せられますか?」


吉川 「誤解なんです」


藤村 「不適切な発言でしょうが! クイニーアマンだなんていやらしい言葉、よく言えますね!」


吉川 「あの、食べ物なんです。甘いやつ」


藤村 「はぁ? それを我々が勝手に誤解したとでも? そんな言い訳が通用すると思いますか? クイニーアマンですよ?」


吉川 「あるんですよ。本当に。お菓子で」


藤村 「またそうやって知らない人を見下して。その態度こそ改めるべきです。反省しているようにはとてもじゃないけど思えない!」


吉川 「すみませんでした」


藤村 「こういった発言もあります。『また海外旅行に行けるようになったらマチュ・ピチュにいきたい』公の場で言うべき言葉ですかね?」


吉川 「マチュ・ピチュ、ペルーの遺跡の」


藤村 「そんな卑猥な場所があるわけ無いでしょ!」


吉川 「あるんです。誤解なんですよ」


藤村 「マチュ・ピチュだけならまだしも『いきたい』だなんて。これは完全なセクシャル・ハラスメントですよ? ご自身が加害者だという自覚はないんですか?」


吉川 「まさかそういった形で伝わるとは思っていなかったので。きちんと説明すべきだったと後悔しています」


藤村 「説明してからと言ってこの発言で傷ついた人はもうどうにもならないんです。こんな発言もありました。『今日のランチはポルチーニ茸のリゾットです』昼間っから何をやってるんですか!」


吉川 「あの、誤解です。キノコの名前でポルチーニ茸ってのがあって」


藤村 「ではあなたはポルチ○マッサージ治療院シリーズもキノコの動画だと言いはるんですか?」


吉川 「知らないです。なんですか、そのシリーズは? 全国民知っていて当然みたいな面で」


藤村 「しらばっくれればなんとかなると思ってるんですか? 卑劣なんですよ」


吉川 「なにか勘違いされているんじゃないかと」


藤村 「こちらに責任を転嫁しないでください。そもそもあなたが不適切な発言をしなければ誤解ということも生じなかったんじゃないですか?」


吉川 「あぁ、まぁ、そうかもしれませんけど」


藤村 「そういった発言をした時の周囲の反応を見ておかしいと思わなかったんですか?」


吉川 「いえ、その時は。場内はスタンディングオベーションだったので」


藤村 「ほらまた! 場内でそんなことをするやつがいるわけないでしょうが! 言ってるそばからそれだ! 反省はないんですか?」


吉川 「いえ、あの。この度は、誤解を与えるような発言をしてしまい誠に申し訳ありませんでした」



暗転

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