合格発表

藤村 「これだけは言っておくが、大学が全てじゃないからな?」


吉川 「あぁ、うん」


藤村 「人生ってのはずっと続くんだ。たとえ大学に落ちようともそんなものはかすり傷だからな!」


吉川 「言いたいことはわかるけど、これから合格発表見に行くのに、もっと適切な言葉あるだろ」


藤村 「そうか。悪かった。大学が全てだ! 落ちたらもう人生の落伍者決定!」


吉川 「逆側に振ってくれってことじゃない。あるでしょ、もっと中間の言葉が」


藤村 「結局大学ってのは補欠合格がすべてなんだよ。補欠以外は合格じゃないと俺は思ってるね」


吉川 「それは違うよ? 中間でもない。狂った偏見だよ。補欠って割と確率的には低い部分をピンポイントで狙えないから」


藤村 「大学ってのはさ、ある意味存在すると思うんだよ」


吉川 「うん。存在する。なにそのひねくり回した結果何も言ってない結論。まぁそう言ってくれる気持ちもわかるよ。最悪を想定していけばどんな結果でも気は楽だからな」


藤村 「いや? 最悪は想定してないが?」


吉川 「最悪じゃないのに落ちる前提の話をしてこないでよ。嫌な気持ちにさせたいの?」


藤村 「そこまでいうなら最悪の想定をするけどさ。このまま合格発表を見に行ったら反大学結社に雇われた大学忍者たちに襲われるぞ?」


吉川 「お前の想定する最悪はそれなの? 確かに大学忍者は想定してなかったよ。言われた所で想像もつかないよ」


藤村 「これはほんのプロローグにすぎない。大学ガスを吐く大学怪獣ユニバーシドンが現れ全人類の半分はしょんぼりすることになるぞ!」


吉川 「壮大になってきたな。しょんぼりってなに? 人類が死ぬとかじゃなくて?」


藤村 「総人口の半数がだぞ? みんなしょんぼりする。ため息で地球温暖化するくらい」


吉川 「なにその最悪の想定。むしろちょっと面白そうな方向に行ってるじゃない」


藤村 「お前は大学忍者の残忍さを知らないからそんなこと言えるんだ!」


吉川 「そうだな。それに関しては反論のしようがない。まったく知らないよ、大学忍者の残虐さは」


藤村 「はぁ、恐ろしい! まさかこんなことになるとは。吉川が落ちてさえいてくれれば!」


吉川 「受かってるの? その最悪の想定の中で俺は合格してるの? 合格してるのに最悪なの? 落ちてるよりも?」


藤村 「これは10年後を描いた続編で明らかになるんだけど、吉川の出自が問題なんだよ」


吉川 「最悪の想定の続編もあるんだ」


藤村 「スピンオフもあるし、なんだったらスピンオフの主人公の大学忍者コゲラの方が人気が出たためにそっちの方が長期連載になってる」


吉川 「誰に? 誰に人気なの? お前の最悪の想定が。世に発表されてるの?」


藤村 「なんせ続編は全然人気でなかったからテコ入れで吉川は身体の99%がサイボーグ化されてるし」


吉川 「最悪だな! それは確かに最悪だよ。そういう形は全然想像してなかったもん」


藤村 「残りの1%であるまつ毛も度重なる拷問のためにボロボロだよ」


吉川 「逆になんでまつ毛だけ残してるんだよ。もっと残すべき人体はあっただろ。もう100%でいいよ、それなら」


藤村 「いいのか? 右半身はほぼ百均で買った便利グッズを流用してるというのに?」


吉川 「どういうサイボーグなの? ワクワクさんが作った? 完成形がポンコツロボットになってるじゃん」


藤村 「それでもお前には人の心が残されてる! ほぼサイボーグになってるし知能指数は6だけど、心だけは人間だ!」


吉川 「知能にもうちょっと割けなかったか? その知能で心が人間でもろくなことしないだろ」


藤村 「まぁ、吉川の話は面白くないから大学忍者コゲラの話をするか」


吉川 「言うに事欠いて面白くないとは何事だよ! お前が勝手に想定した最悪の図なのに。まぁいいよ。おかげで気が紛れた。いよいよ合格発表だ」


藤村 「おい、見ろよ!」


吉川 「あ、あった! あったよ! 合格だ! やったー!」


藤村 「しかしこれは悲劇の幕開けに過ぎなかった」


吉川 「最悪の想定につなげないでよ!」



暗転

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