うそつき村

吉川  「おかしいな。こっちのはずなんだけど」


藤村  「また道間違えたか? なんでだろ。ちゃんと現地の人に聞いたのに」


吉川  「ねー。こっちだって言ってたからあってるはずなんだけど」


藤村  「……待てよ?」


吉川  「どうした?」


藤村  「こういう話を聞いたことないか? うそつき村と正直村」


吉川  「あ、なんか頭の体操で見たことある!」


藤村  「必ず反対のことを言ううそつき村と、正しいことをいう正直村というのが隣り合っていて、見た目はまったく一緒なので区別がつかない。長話が好きじゃないので少ない質問でどちらかを判別しなきゃいけないというやつだ」


吉川  「まさかさっきの現地の人が?」


藤村  「だっておかしいだろ? あの人の言ったとおりに来てこんなに迷うことあるか?」


吉川  「全然嘘ついてるようには見えなかったけど、うそつき村の因習だとしたらおかしくないのか。サイコパスの村みたいだな」


藤村  「次に現地の人に会ったらなんて聞けばいいのかを考えよう」


吉川  「うそつき村の人か正直村の人かを判別できて、なおかつ正しい道筋がわかる質問だな」


藤村  「初体験っていつ?」


吉川  「それを聞いてどうする? イントロのインタビューじゃん。しかも割と嘘をつかれるやつだろ! それで何が判別できるんだよ」


藤村  「最初にそれを聞いておいた方があとの興奮度合いが違うかなと思って」


吉川  「あとに興奮するターン来ないよ? 目的地にたどり着くのが一番の興奮だから。たどり着いた時に頭をよぎる初体験の年齢はノイズでしかない」


藤村  「あれ? 髪切った?」


吉川  「知り合いじゃないだろ。タモリがどんな時でも万能だと信じ過ぎだよ」


藤村  「なんだ、太ったからか」


吉川  「絶対に言っちゃダメだよ。納得するのも失礼だし。それを言われて親切に教えようって言う人いないから。正直嘘つき以前の問題だから」


藤村  「年収いくらなんだっけ?」


吉川  「それを直で聞いてくる人怖いよ。なんかそれって聞いちゃいけないことの一つじゃん。ノーオブラートで聞くの? しかも面識ない人に」


藤村  「正直村の人よりうそつき村の人のほうが年収は高いはずだから」


吉川  「そんな身も蓋もない大人の論理を繰り広げるなよ! その話は誰も幸せにならないんだよ!」


藤村  「磯山さやかってちょうどいいよね?」


吉川  「なんだよ、その質問! 何を得られる質問なんだよ。お前の好みだろ。ちょうどいいかちょうどよくないかの基準もまったくわからないんだよ!」


藤村  「でもちょうどよくない?」


吉川  「確かにちょうどいいよ! ちょうどいいといえば磯山さやかか、小腹がすいた時のお稲荷さんか、というくらいちょうどいいよ。ただ磯山さやかをちょうどよくないと答えたからうそつき村って断定できるか? 好みもあるぞ?」


藤村  「多分答えは、私たちの目指す場所はこっちですか、とあなたに聞いたら『イエス』と答えますか? だ」


吉川  「わかってるんじゃないか! 駆り出された磯山さやかはなんだったんだよ。でも複雑だな。それだけ複雑な質問がきちんと現地の人に伝わるかどうかが心配だ」


藤村  「そうなんだよな。言葉の問題もあるし」


吉川  「でも聞いてみるしかないか。あ、ほら。現地の人だ」


藤村  「すみませ~ん!」


京都人 「おいでやす~」



暗転

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