卒業

藤村 「えー、皆さんはこれをもって卒業ということになりますが、卒業というのは決して何かのゴールではありません。新たなることへのスタートなのです」


吉川 「はい」


藤村 「かくいう先生も先日あるソシャゲを卒業しました。とても辛かった。廃課金だったので辞める決断をするまでかなり迷いました。しかし今はすっぱりと辞め、新たなる気持ちでいっぱいです。あなた達も同じような気持ちでいると思います」


吉川 「いや、そんなのと同じって言われても」


藤村 「なんせ廃課金だったのでオークションサイトでアカウントを売ろうかと思ったのですが、ゲーム自体がもう終わってるレベルの人気のなさでまったく需要がなく、そういった意味でもあなたたちと同じように涙を流しました」


吉川 「そんなしょーもない涙と一緒にするなよ」


藤村 「思い出します。初めてガチャでSSRが出た時のこと。生徒たちがハズレばっかりだったせいか喜びもひとしおでした」


吉川 「聞き捨てならない事を言うなよ。生徒もそれなりに粒ぞろいだったろうが」


藤村 「でもどんなクズキャラでも愛情を込めて育てれば使えるようになる。そんなことを生徒たちから学びました」


吉川 「それはソシャゲの方から学べよ。生徒をクズキャラ呼ばわりするな。使えるって考え方も教師にあるまじきだろ」


藤村 「でもまぁゲーム自体がクソゲーなので付き合ってられないので卒業ということで」


吉川 「ソシャゲのことだよな? 今言うな? この場で、そういうことを」


藤村 「卒業というのは、言ってみれば童貞を捨てるようなことでもあります」


吉川 「逆だろ! そっちの方が卒業を引用してるんだよ。なんちゅー例えを出してるんだ」


藤村 「若い頃はしたくてしたくてしかたがないものです。でも先生くらいの歳になって考えてみると、やっぱりしたくてしたくてしかたがありません」


吉川 「何の話をしてるんだよ! 教訓っぽいものがまったく含まれてねーじゃねえか」


藤村 「しかし振り返ってみると卒業自体が良い思い出ではないのです。卒業するまでに過ごした日々、仲間たちと、そして風俗嬢と、一緒に過ごした時間こそがかけがいのないものなのです」


吉川 「仲間の他に余計な人が入ってるよ! それはお前の個人的な卒業だろ! いないんだよ、俺たちの仲間には」


藤村 「思い出して下さい。はち切れんばかりの思いを抱えて入店した時のことを」


吉川 「入学な! なにをはち切れそうにさせてたんだ? バカなのか? 神聖な学び舎を何だと思ってるんだ?」


藤村 「これからも困難はあると思います。そんな時に一緒に過ごしたものの顔を思い出して、乗り越えたり、シコったりしてください」


吉川 「なんだよ、シコったりって。ふざけんな?」


藤村 「し、思考したり」


吉川 「思考したりも意味通じてねえだろ。カバーできてないんだよ」


藤村 「私からは以上です。みなさん、卒業おめでとうございます」


吉川 「釈然としないけど。ありがとうございます」


藤村 「なおまた卒業の際にはこの会員カードの方にスタンプを押します。スタンプが6個貯まると次回の卒業が無料とういことで。アプリの方もありますのでダウンロードよろしくお願いします」


吉川 「学校の卒業にそのシステムねぇんだよ!」



暗転

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