オンライン会議

吉川 「皆さん音声の方がよろしければ、オンライン会議を始めさせていただきます」


藤村 「よろしくお願いします」


吉川 「藤村さん? 大丈夫ですか?」


藤村 「はい。大丈夫です。音声ちょうどいいです」


吉川 「いえ、音じゃなくて」


藤村 「画像も大丈夫です」


吉川 「そうじゃなくて、どなたか後ろにいらっしゃいますけど?」


藤村 「大丈夫です。続けてください」


吉川 「いえ、あの。大丈夫ではなくて。会議なので、そちらの方どちら様ですか? お祖父様?」


藤村 「あ、関係ないので気にしないでください」


吉川 「関係ない人なの? なおさら気になるよ。なんで関係ない人が部屋にいるの?」


藤村 「大丈夫ですー」


吉川 「大丈夫かどうかの問題じゃなくてですね。会議なので部外秘のこともありますし」


藤村 「はい。大丈夫です」


吉川 「だから、そちらの方は?」


藤村 「何もしゃべらないんで大丈夫です」


吉川 「そう言う問題じゃなくないですか? どなたなんですか、その人は」


藤村 「ちょっとよくわからないです」


吉川 「え? あなたもわかってないの? どういうこと? わからない人が部屋にいるの?」


藤村 「はい」


吉川 「はい、って本当に大丈夫なんですか? なにか事件性のあること?」


藤村 「いえいえ、もう気にしないでいただいて」


吉川 「無理ですよ。なんかおじいちゃんこっち見てるもん。いや、おじいちゃん手を振ってるけど、誰なんですか?」


藤村 「知らないです」


吉川 「知らないわけないでしょ。なんで知らない人がいるの?」


藤村 「なんかいるんです」


吉川 「なんかいるの? 知らない人が? どういう状況? そこあなたの部屋ですよね?」


藤村 「はい、そうです」


吉川 「なんであなたの部屋に知らない人がいるの?」


藤村 「初めからいたんで」


吉川 「初めからいた人なの? ますますわからないよ?」


藤村 「その代わり家賃が安かったんで」


吉川 「どえらい肝っ玉してるな。知らない人がいるのに家賃安いからいっかってなったの?」


藤村 「はい」


吉川 「そんなことある? つまり同居ってこと?」


藤村 「ただいるだけなんで」


吉川 「ただいるだけが一番怖いでしょ。なにそれ」


藤村 「大丈夫ですから、会議の方を」


吉川 「こっちの精神が大丈夫じゃないよ! 全然理解できない。誰なの? なんて人なの?」


藤村 「いや、知らないです」


吉川 「聞いたりしないの? ずっといて」


藤村 「別に、ただ家賃を安くするためにいる人なんで」


吉川 「そんな機能の人が存在するわけ無いでしょ。なにちょっとした節約グッズみたいに扱ってるの?」


藤村 「特に危害も加えないし、家賃を安くする以外になんの影響もないです」


吉川 「嘘だろ。存在自体が影響力強すぎるよ」


藤村 「別に出かける時は鍵をかけますし、なにか起こったことはないです」


吉川 「その人がいるのに鍵をかけるとかあんまり意味なくない? 開け放題でしょ、その人にとっては」


藤村 「ある意味そうですね」


吉川 「あなたの割り切り方なにごと? 本当にコミュニーケーションとかとらないんだ?」


藤村 「しゃべらないんで」


吉川 「その人、生きてるの?」


藤村 「それもちょっとわからないです」


吉川 「あ……」


藤村 「会議の方どうぞ」


吉川 「あ、はい。なんか、じゃあ進めさせてもらいます。皆さんよろしいですか?」


藤村 「はい」


吉川 「えーと、あの。今回の議題は、夏に開かれる納涼肝試し大会についてなんですが」


藤村 「すみません、それなんですが。私ちょっと怖いの苦手なんですよね」


吉川 「わかりました。では終了です。お疲れ様でした!」



暗転

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