ですが

司会 「アマゾン川で……」


ピンポーン!


吉川 「ポロロッカ!」


司会 「……ですが?」


吉川 「しまったー」


司会 「残念。吉川さん、問題の続きをよく聞いてください。アマゾン川で干潮時に川が逆流する現象をポロロッカと言いますが、この現象を利用して川でサーフィンを楽しむ人もいるそうです。ではその現象の名称をもう一度心を込めて言ってください」


ピンポーン!


藤村 「ポロロッカ」


司会 「正解! 藤村さんお見事」


吉川 「え? あの。どういうこと? 言いましたけど。同じ答えを」


司会 「ええと違いますね。心を込めてなので。問題文をよく聞かないと」


吉川 「心ってなに? 俺だってそれなりにこもってたよ」


司会 「いいえ、全然響きませんでした。フランケンシュタインの怪物くらい心がなかった」


吉川 「フランケンシュタインの怪物は結構心があって悩んだりもしてるよ!」


司会 「では次の問題です。シェイクスピアの四大悲劇、オセロー、マクベス、リア王、あと一つは……」


ピンポーン!


吉川 「ハムレット!」


司会 「……ですが?」


吉川 「またか」


司会 「まだ問題文に続きがあります。そのハムレットの中に出てく登場人物の中で宰相ポローニアスの娘で……」


ピンポーン!


吉川 「オフィーリア!」


司会 「……ですが?」


吉川 「またかよ」


司会 「問題の続きを聞いてください。宰相ポローニアスの娘であるオフィーリアに対してハムレットが言い放ったセリフといえば……」


ピンポーン!


吉川 「尼寺へ行け!」


司会 「……ですが?」


吉川 「問題に全然いかないな」


司会 「よく問題を聞いてください。この作品を書いた作者は?」


ピンポーン!


藤村 「シェイクスピア!」


司会 「正解」


吉川 「おかしくない? 問題文の一番最初に言ったよね? シェイクスピアの四大悲劇のって。なんでそれが答えになるの?」


司会 「言いました?」


吉川 「言ってるよ。そこに書いてあるだろ」


司会 「いえ、問題文が長くて2ページ目に入っちゃったからわからなくなって」


吉川 「長すぎるんだよ。クイズでなんでそんな長尺であらすじ説明してるんだよ」


司会 「ちょっと吉川さんなにか言いたいことがあるんですか?」


吉川 「いや、だっておかしいだろ!」


司会 「……ですが?」


吉川 「なんだよ、ですがって! 続きがあるみたいに言うなよ。おかしいのはおかしいんだよ!」


司会 「……ですが?」


吉川 「ですがじゃないよ。あなたの態度がおかしいってことで話は完結してるんだよ」


司会 「……ですが?」


吉川 「全部それで乗り切ろうって思ってないか? わかったよ。ここは一旦納めるよ。次はちゃんとやってくれよ?」


司会 「……ですが?」


吉川 「おいおい、せっかく先に進めようと思ったのにその態度は何だよ? なに? もう全部吐き出せってこと?」


司会 「……ですが?」


吉川 「サンプリングされてるのか? なんかもうここまで来ると気持ち悪いな。あなたちゃんと意思がある? もういいんだよ。ですがは!」


司会 「……ですが?」


吉川 「わかった。もう勘弁してくれ。言わないから。二度と言わない。だからもですがはやめて。ないから。ですがのあとになにもないから」


司会 「……ですが?」


吉川 「すみませんでした。私が悪かったです。ですがはやめてください。どうかお願いします」


司会 「……からの?」


吉川 「展開させるなよ」



暗転

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