秘めた力

藤村 「クソッ! 力が暴走しそうだ!」


吉川 「何だって!? 制御出来ないのか?」


藤村 「無理だ。力を使いすぎた。危険なことはわかっていたのに、それでも使わざるをえなかった!」


吉川 「お前に頼りすぎてた俺たちのせいだ。どうにもならないのか?」


藤村 「こうして抑えてるのもやっとだ。いいから、お前らは離れろ!」


吉川 「見捨てられるかよ! お前がいなかったら俺たちなんてとっくに全滅していた。そんなお前を一人にできるか!」


藤村 「クッ! ダメだ。溢れ出てしまう。俺のリビドーが……」


吉川 「リ、リビドー? リビドーって何?」


藤村 「めちゃくちゃエッチな気分だ」


吉川 「リビドーが溢れ出しそうなの? それを必死で抑えてるの?」


藤村 「もしこれがすべて出てしまったら大変なことになる!」


吉川 「そりゃ大変なことになるけど。思ってた大変さと違うな」


藤村 「お前が勝手に思ってただけだろ! 俺はずっとこの力で戦ってたんだ」


吉川 「あ、そうなの? リビドーで? 今まで俺たちが助けられてたの、なんかお前の中に眠る強力なエッチな気分だったの?」


藤村 「無尽蔵の力だ」


吉川 「なんかちょっと気持ち悪いな」


藤村 「ふざけんなよ! 何度命救ったと思ってるんだ」


吉川 「そうだけどさ。なんか闇の力みたいなやつかと思ってたから。それはそれでやばいけど、エッチな力なの?」


藤村 「世界を滅ぼすほどのな!」


吉川 「どういう理屈でエッチさで世界滅びるの? 方向性としては繁栄しそうですらあるけど」


藤村 「もうそういうスケールじゃないんだよ! このまま放っておくと、俺のリビドーが爆発して最終的に地上は人で埋め尽くされる」


吉川 「人口がそこまで増えるってこと? 一人のリビドーでそうはならないだろ」


藤村 「なる! そのくらいすごい。神も恐れる力だ」


吉川 「恐れてはいないんじゃないかな。気持ち悪がってるだけで」


藤村 「失敬な。くぅ、こうしてる間にもどんどん溢れてくる」


吉川 「ちょっとやめてくれない? そんなの漏らさないでよ。どこか他所でやって」


藤村 「お前、さっきと言ってること違うじゃねーか!」


吉川 「だって。闇の力的なものだったら、俺たちも命をかけて抑え込もうとは思うけど。エッチな気分でしょ?」


藤村 「カジュアルに言うなよ! 恐ろしいパワーなんだ」


吉川 「仲間で協力してエッチな気分を抑えました、なんて人に言えないし」


藤村 「闇の力でも一緒だろ!」


吉川 「全然違うよ。イメージが違う。そんなの関わり合いになりたくない」


藤村 「今までこの力のおかげでやってこれたくせに!」


吉川 「大体なんだよ、リビドーって。なんでそんな能力なんだよ」


藤村 「話せば長くなるが、かつてこの世界に強大な力があった」


吉川 「エッチな?www」


藤村 「お前! 笑い事じゃないぞ! この俺の呪われた出自をそんな半笑いで聞くなよ!」


吉川 「だって笑わせようとしてくるんだもん」


藤村 「してないだろ! この俺の必死な姿を見てよく笑えるな。これ俺が抑えきれなかったら大変なことになるんだぞ?」


吉川 「気持ち悪いなー。なんとかしなさいよ」


藤村 「だからなんとかしようと頑張ってるだろうが! もうダメだ。こうなったら手は一つしかない」


吉川 「いやいやいや。やだよ? そんな目で見るなよ?」


藤村 「違うよ! 俺を、このまま殺せ! 力が解き放たれる前に!」


吉川 「そんなこと言いながら変なこと考えてんじゃないの?」


藤村 「よくここまで覚悟を決めた相手にそんなこと言えるな? 人の心無いの?」


吉川 「こういうの見たことあるもん。つまり、そういうことでしょ?」


藤村 「違うよ! 俺はまだ理性を保ってるんだよ! それでなんとか抑えようと超頑張ってるの! わかる? この頑張り」


吉川 「わかったよ。この話、今度飲み会で話していい?」


藤村 「クソォ! こうなったらお前も道連れにしてやる!」


吉川 「あー、やっぱそういうつもりじゃん。キモっ!」



暗転

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