元はと言えば

吉川 「バレンタインだなぁ」


藤村 「それが実は浮気がバレてさぁ」


吉川 「うわぁ、最悪だなお前」


藤村 「だろ? 最悪なんだよ。チョコ貰えるか怪しくなってきた」


吉川 「いや、お前の状況に共感してるんじゃなくて。浮気をするお前が最悪ってことだよ」


藤村 「でも4股だから」


吉川 「だからなんだよ。より最悪だろ」


藤村 「他に1人いたっていると、確かにヤバいけど、他に3人いるわけだからその分ヤバさは分散されるわけだろ?」


吉川 「どういう法則? 分散されないよ! 3倍だよ。むしろ3乗だよ」


藤村 「1の3乗は1だぞ? 0の3乗は0だ」


吉川 「0ではないだろ。1でもないよ。相手の怒りはもっと大きいよ」


藤村 「違うんだよ。まぁ、ある意味俺も悪かったけどさ、元を言えばアダムとイブのせいじゃん?」


吉川 「おいおい、全部背負わせる気か? アダムとイブに。お前が勝手に拵えた負債を」


藤村 「でも元はと言えばだから」


吉川 「そんなとこまで元に戻って押し付けようとしてるやつ初めて見たよ」


藤村 「改めて考えてみると、やっぱりあいつらの責任はゼロではないわけでしょ?」


吉川 「お前の4股の件に関してはほぼゼロと言い切っていいよ。誤差くらいしかないよ」


藤村 「いやあ、そんなことないと思うな。俺の内なるアダムが騒いだ感じがする」


吉川 「言っておくけど、アダムとイブは浮気してないからね? 彼らの罪は知恵の実を食べたことで、他の人を好きになったりしてないよ?」


藤村 「そ、そうなの? 俺の内なるアダムは?」


吉川 「それはただの性欲だよ。理性のない欲望。お前のだらしない。お前由来100%の」


藤村 「でも元はと言えばさぁ」


吉川 「確かにな。それアダムとイブも言ってたんだわ。アダムは元はと言えばイブのせいって言い出したし、イブはイブで元はと言えば蛇のせいって罪を認めなくて。それで神様から怒られた。お前も怒られろ」


藤村 「いや、俺はなんとか怒られることなく事を収束したいと考えてる」


吉川 「お前が考えるのは自由だけど身勝手すぎるだろ。なんでやり方次第では上手くいけそうな顔してるんだよ」


藤村 「でも元はと言えばイエスのせいじゃない?」


吉川 「おいおい、大分時代は下ってきたけど、そこに押し付けられる罪じゃないんだよ」


藤村 「だってあの人はすべての罪を背負って行ってくれたわけでしょ? だったら俺の4股も浄化されてるはずなんだけど」


吉川 「さすがのイエスもお前の欲望丸出しの罪は背負いたくないだろ」


藤村 「でもほら、結局愛ゆえの罪みたいなものなんだから。考え方としてはイエスと同じだよね」


吉川 「全然同じじゃないよ。都合のいいように解釈する天才か? 各方面から厳し目に怒られろよ」


藤村 「元はと言えばイエスが全部怒られてくれればよかったのに」


吉川 「怒られてるだろ、十分すぎるほど。それであんなんなっちゃったんだから。お前の怒られはイエスに比べたら屁みたいなものだよ」


藤村 「元はと言えば4股が悪いっていう価値観を作った人間が悪いわけじゃない?」


吉川 「食い下がるなぁ。身勝手さのみでそこまで食い下がれるか」


藤村 「だからこれはそんな価値観を持つ人類全てで受け持つ必要があると思うんだよ」


吉川 「責任逃れのために人類全体に押し付け始めたか」


藤村 「その中には当然お前もいるから、お前だって他人事じゃないわけだ」


吉川 「他人事だよ。というか、お前事だよ! お前のみの罪だよ。人類皆さんでシェアしましょうねみたいな顔してるんじゃないよ」


藤村 「でも元はと言えばお前も悪いよ」


吉川 「なんでだよ! 身に覚えがなさすぎるよ!」


藤村 「お前がバレンタインの話題を振るから。せっかく何も考えずにいようと思ったのに」


吉川 「現実を直視しろよ!」



暗転

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