組み分け帽子

吉川 「スリザリンは嫌だ! スリザリンは嫌だ!」


帽子 「吉川の所属する寮は……。ぬるんちょ学園全員俺様寮です!」


吉川 「え、なにそれ? ないでしょ、そんな寮」


帽子 「さて次の生徒は?」


吉川 「待って待って! え? なにそれ。寮ってグリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンじゃないの?」


帽子 「相応しかった寮を告げたまで」


吉川 「なんだよ、ぬるんちょ学園て。ホグワーツですらない!」


帽子 「交換留学生ということで」


吉川 「してるの!? 交換留学を。ぬるんちょからホグワーツに来たやつどんな思いで授業受けるんだよ」


帽子 「一度決まったものはもうどうしようもない。そもそも私はただの帽子だし」


吉川 「生徒の重要な人生の分かれ道にいるくせに責任逃れするなよ。別に無茶は言ってないでしょ。ホグワーツの寮にしてくれって言ってるんだから」


帽子 「ぬるんちょ学園全員俺様寮は嫌かね?」


吉川 「嫌かっていうか、そういう想定で来てないもの。そっちがよかったら最初からぬるんちょ学園に入学するよ。どんな学園かわからないけど」


帽子 「学業よりも恋のハラハラハプニングてんこ盛りの学園だ」


吉川 「勉強をしろよ、学生なら! 全員俺様寮だってなんだよ。寮生活なのに協調性ないやつだけ集めてどうするんだ」


帽子 「喜ぶ人も多いぞ?」


吉川 「乙女ゲーの導入だろ! 『あ~ん、私の学生生活、どうなっちゃうの~♡』みたいなやつ。でもそこに入寮させられる俺様でもない生徒の心身の健康を考慮しろよ!」


帽子 「その事はまったく考えてなかったが決まったことだ」


吉川 「絶対謝らねえやつだな。ダメだろ、考えろよ。生徒の人生掛かってるんだから」


帽子 「もう一回やるか? どうしてもズルしたいというのなら」


吉川 「ズルじゃないだろ。なんでこっちが悪いみたいに言うんだよ。正当に選べっつってんの! やるよ」


帽子 「吉川の所属する寮は……」


吉川 「もうなんだったらスリザリンでもいいよ……」


帽子 「ふわふわケモハーフ学園偶蹄目寮だ!」


吉川 「なんで!? なんで学園がそもそも違うんだよ! ホグワーツの中で選べばいいだろ」


帽子 「ふわふわケモハーフ学園は楽しいぞ? 生徒はみんな動物とのハーフ」


吉川 「こっちは純血の人間なんだよ。なんでそっちに飛ばされるの」


帽子 「純血主義か。困ったものだ」


吉川 「そういう意味じゃないよ。別にマグルを差別してないし、動物だって差別してるつもりはないよ! ただ俺は違うから」


帽子 「ふわふわケモハーフ学園はハグリッドも行きたがってたぞ」


吉川 「ハグリッドはどっちかというとあっち側だろ! 一緒にしないでくれ。だいたい偶蹄目寮ってのもなに? 目で分かれるものなの? 人間の俺がなぜ」


帽子 「入学時はなぜかわからなくても、そのうちにわかるようになる」


吉川 「なりたくないんだよ。俺はふわふわケモハーフ学園偶蹄目寮だったなって諦観したくない。せっかくホグワーツに入ったんだから」


帽子 「またズルする?」


吉川 「ズルって言うなよ! ちゃんと選別しろっての。できるでしょ? プロなんだから。あなたそれ専属でずーっとやってるわけでしょ?」


帽子 「ラストだよ? 本当に」


吉川 「それはこっちのセリフだよ。ラストチャンスをやるからちゃんとやれっての!」


帽子 「吉川の所属する寮は……」


吉川 「どこでもいい。本当にスリザリンでも喜んでいく。頼む……」


帽子 「男塾男根寮じゃーい!」


吉川 「じゃーい、じゃねえんだよ! なんで男塾! 学校かどうかもよくわからない!」


帽子 「魔法なんぞ女子供の遊び、男なら拳で語れい!」


吉川 「魔法を学びたくてきてるのに、なんで全部が暴力の世界に行ってるの? 全然楽しくないじゃん」


帽子 「レクリエーションも充実してるぞ」


吉川 「しなくていいんだよ。命の危険のあるレクリエーションとかは」


帽子 「男塾名物、裸でケバブだ!」


吉川 「アバダケダブラみたいに言いやがって!」



暗転

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