ゴジラ

藤村 「ゴジラって最初に現れた時、相当ビックリしたと思うんだよ」


吉川 「そうだろうな。今調べたら1954年だって。昭和29年だよ」


藤村 「当時の人もそうだけど、当時の妖怪たちも驚いたと思うよ?」


吉川 「当時の妖怪たち? それはなに? フィクションの?」


藤村 「いや、昭和29年ていったらまだそこら中に妖怪がいる時代だろ」


吉川 「いないと思うけど? というか、どの時代でも実在はしてないんじゃない? なんとなくいるような気がしてる謎の生物が妖怪ってわけで」


藤村 「でも今よりも相当な勢いでいるような気がしてるわけだろ」


吉川 「そうかもしれないけど、はしない。信じてるっぽい人は今よりも多いのかな」


藤村 「ってことは、今よりも全然いるってことでしょ」


吉川 「頑として譲らないな。まぁ、今よりもという観点からしたら存在感はあるだろうな。存在感と存在は違うけど」


藤村 「妖怪たち、ビックリしただろうな。ゴジラ」


吉川 「それ妖怪たちに共感しなきゃいけない話か?」


藤村 「だってあんな無茶してるんだよ? あれ、大量虐殺ってやっていいんだっけ? みたいな衝撃はあったと思うよ」


吉川 「妖怪たちに? 彼らとしては『それはさすがに』って自制してたってこと?」


藤村 「一人二人はね、状況によってはやらざるを得ないことはあるけど。あんなに大っぴらにやっちゃっていいんすか? ってなるよね」


吉川 「暴力に対する倫理観が上書きされちゃった可能性があると?」


藤村 「だいだらぼっちなんてポテンシャルとしてはゴジラくらいいけてたわけじゃない? 他にもデカい系の見越し入道とか、やろうと思えばできるけど、それをやっちゃあおしまいだよな。みたいな仁義があったわけだよ」


吉川 「確かに能力の割にそれほど残虐なことはしてないよな。妖怪って」


藤村 「それが放射能で熱線ですよ。ゴジラときたら。こりゃ、小豆洗ってる場合じゃないぞってなるでしょ」


吉川 「小豆洗いの価値観アップデートされるか、それで? あいつ言っても人取って食おうかみたいな唄歌ってるよ」


藤村 「小豆も遺伝子組換えにしようかなと思うはずだよ」


吉川 「そのスケールでの変化は別にいいんじゃない?」


藤村 「なんかよくないんでしょ? 遺伝子組換えって」


吉川 「すごいぼんやりとした感想だな。放射能と同じレベルで考えてたの? 妙な自然派シンパに騙されてない?」


藤村 「乳酸菌がとにかく一番いいんだから。乳酸菌取っておけば風邪も引かないし」


吉川 「感化されるなよ。簡単なやつだな。遺伝子組換えは別にそんな危険なやつじゃないだろ」


藤村 「だったら放射能だってごくごく飲めばいいだろ!」


吉川 「いやいやいや。そもそも放射能は液体じゃないし。雑だな、色々と」


藤村 「二酸化炭素だって排出すればいいだろ!」


吉川 「するよ。言われなくても。生きてるからな。どんどん語る網目が雑になってきてる」


藤村 「だったらゴジラに街を破壊されればいいじゃん!」


吉川 「ついに同列にきたなゴジラが。二酸化炭素と。その0か100の思考やめた方がいい。極端な思想は身を滅ぼすぞ」


藤村 「妖怪は純真なやつが多いからゴジラみたいな暴力的な存在に感化されやすいんだよ」


吉川 「妖怪に対して身勝手に寄り添ってるな。別に純真じゃない妖怪も多いだろ」


藤村 「でも少なくとも愚かな人類のように二酸化炭素を出してない!」


吉川 「人類と敵対する側に行くなよ。それでもやってかなきゃいけなんだから異なる考えの相手とでも協調するのが社会というやつだろ」


藤村 「……というくらいの混乱は妖怪側にもあったはずなんだよ」


吉川 「今の全部仮定だったの? その割には熱が入ってたけど」


藤村 「ほら、妖怪と言っても一枚岩じゃないから。若いやつなんか言っても聞かないんだよ。1000年くらい妖怪やってるやつとはジェネレーションギャップもある」


吉川 「妖怪の若手もいるのか」


藤村 「妖怪USBを逆なのかどうなのかわからなくするやつとか」


吉川 「あれ妖怪の仕業か。若手の」


藤村 「妖怪You Tube見たいのに限ってすぐ広告はいるやつとか」


吉川 「それは妖怪じゃなくてgoogleの仕業だな」


藤村 「そういう若手のとんがった妖怪が道を外さないように暴力的な映画は妖怪年齢指定みたいの作ったらいいんだよ。Y1000とか」


吉川 「乳酸菌っぽいな」


藤村 「とにかく一番いいから、乳酸菌は」


吉川 「雑!」



暗転

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