千利休

利休 「この利休の茶を所望というのはお主かな?」


吉川 「わぁ、本物の千利休! まさかお会いできるとは」


利休 「では早速、ご注文は何にいたしますか?」


吉川 「ちゃんと聞いてくれるんだ。オーダー形式で。どう言う風に注文すれば良いんですか?」


利休 「この利休、千のメニューを持つ茶人として名付けられた。どんなお茶でも淹れてしんぜよう」


吉川 「千のってそういうことだったの? 異名の千だったんだ。でも千のメニューでしょ? 多すぎない? 選べないよ。オススメは何ですか?」


利休 「オススメは今の時期ですと抹茶フラペチーノですね」


吉川 「フラペチーノも許すんだ。利休ほどにもなれば」


利休 「千のメニューのうちのほんの一つです」


吉川 「じゃ、抹茶フラペチーノ」


利休 「サイズはいかがいたしますか? 500サイズから選べますが」


吉川 「そんなにサイズ展開してるの? 多すぎない? 1mlごとに刻んでない?」


利休 「お茶の種類が2種類でサイズが500の全1000種のメニューとなってますので」


吉川 「千のメニュー謳って実質2だったの? サイズで水増ししてるんじゃん。抹茶フラペチーノの他に何があるですか?」


利休 「オリジナルブレンドです」


吉川 「コーヒーみたいな名前だな。お茶でしょ? サイズも多すぎるよ、ちょうどいいサイズはどれなんですか?」


利休 「だいたい大まかに四種類に絞りますとS・M・L・Wとありますが?」


吉川 「すごい普通のサイズ展開になったな。それでいいですよ。Wって2倍ってことですか?」


利休 「Wはワビの略です」


吉川 「あ、そうなんだ。ワビ。全然サイズ感が見当付かない。じゃあSはサビ?」


利休 「スモールです」


吉川 「そこは普通なんだ。現代の感性にあわせてるのさすがって感じだな。じゃあWで」


利休 「ワビはめちゃくちゃ少ないですけど大丈夫ですか?」


吉川 「あ、少ないんだ」


利休 「もう出てきたら侘しさしかない量。その割に値段は変わりません」


吉川 「それはちょっともったいないな。せっかくの千利休のフラペチーノだし。だったらLで」


利休 「リトルでよろしいですか?」


吉川 「あ、Lってリトルなの!? 少ないんだ。ならMで」


利休 「かしこまりました。ミニで」


吉川 「全部少ないんだ! 500種類あってなんで絞ると小さいのばっかりなんだよ。スモール・ミニ・リトル・ワビってむしろ違いがあるのか」


利休 「あんまり飲みすぎるとお腹タプタプになっちゃいますし」


吉川 「客のお腹タプタプ事情まで考慮してくれるたんだね。さすが茶人」


利休 「ではこちらレシートを持って受け取りカウンターの方でお待ち下さい」


吉川 「目の前で立ててくれるわけじゃないんだ。思ってたのとちょっと違う」


利休 「目の前でやったほうが良いですか? 久しぶりの期間限定メニューなので手際悪いかも知れませんが」


吉川 「千利休でもそんなことあるんだ」


利休 「この間マネージャーに注意されたばっかりで」


吉川 「千利休の上にマネージャーがいるの? 結構複雑な立場なんだな」


利休 「あれ? これじゃなかったっけな? すみません機械の調子が。マネージャー! マネージャーお願いします!」


吉川 「機械の操作に手間取ってるじゃん。なんか定年後にバイトしてるおじいちゃんに無理言ったみたいで気が引けるな」


利休 「あ、大丈夫です。なんかガーってなりました」


吉川 「ガーって作るんだ。千利休が。機械で。今のところ予想が一個も当てはまってない」


利休 「大変おまたせしました。抹茶フラペチーノです」


吉川 「でも味はきっと格別なんだろうな」


利休 「あぁ! しまった。こんなものをお客様にお出しできない!」


吉川 「え? どうしたんですか? なんかこだわりが!?」


利休 「カップに書くありがとう的なメッセージを失敗してグチャってなっちゃいました」


吉川 「別に千利休に求めてないよ、それは」



暗転

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