インタビュー

藤村 「お疲れのところすみません。吉川選手、おめでとうございます。一刻も早く休みたいでしょうから手短に、はいかいいえで答えていただければ結構です」


吉川 「心遣いありがとうございます」


藤村 「今回の対戦について、相手選手には以前に負けたことがありましたが、今回改めて戦うあたって、リベンジ的な気持ちはあったりなかったりしたのでしょうか?」


吉川 「あ、はい。リベンジという気持ちはですね……」


藤村 「はいかいいえ、だけで結構です」


吉川 「はい」


藤村 「あったりなかったりしたわけですね?」


吉川 「あったりなかったり? ありました」


藤村 「あったりなかったりがあったわけですね。そして今回出場選手の中では最高齢ということになりましたが、まだ現役を続行するという意志はあったりなかったりするのでしょうか?」


吉川 「あったりなかったりってどっちですか?」


藤村 「あの、はいかいいえで結構です」


吉川 「……はい」


藤村 「そうですか。あったりなかったりするわけですね。では引退した後に飲食店を開きたいと以前語っておりましたが、それに対して具体的な動きなんかはあったりなかったりするのでしょうか?」


吉川 「ったり? 始めてるかどうかですか? いえ、まだ……」


藤村 「あったりなかったりはしないということですね」


吉川 「その、たりってのがよくわからないんだけど」


藤村 「わからなかったり?」


吉川 「うん、あ? はい。わからなかったり」


藤村 「わかったり?」


吉川 「な、なんなんですか。そのたりって」


藤村 「気になったりしなかったりします?」


吉川 「なりますよ。気になる! 気にならなくはない!」


藤村 「お疲れのようですので、お気にさらずに結構です」


吉川 「いや、疲れてるけども! なんかその聞き方が余計に疲れる」


藤村 「疲れたり疲れなかったりしますか」


吉川 「疲れてるんだよ。疲れさせる訳のわからない聞き方をしないでくれ」


藤村 「あれ、ひょっとして怒ったり怒ってなかったりします?」


吉川 「いえ、怒るというほどではないけども」


藤村 「怒ったり怒ってなかったりはしてないということですね」


吉川 「なんなんだ、その何も言ってない言葉は。その問いにイエスと答えてもノーと答えても何も言ってないだろ! もっとダイレクトに聞いてくれよ」


藤村 「ダイレクトに聞いたり聞かなかったりしてもよろしいのですか?」


吉川 「なんなの、その広川太一郎の冗句みたいなのは。聞かなかったりはしないで! 聞いて!」


藤村 「応援してくれたファンの方々になにか言葉は……」


吉川 「あります! なかったりしないから! ある!」


藤村 「逆に応援してくれなかったりした方々になにか言葉はありますか?」


吉川 「してくれなかったりの方? してくれなかったりの方にはないかな。言っても仕方ないでしょ。求められてないんだから」


藤村 「では総合的に見てあったりなかったりという感じですか?」


吉川 「どうしてもあったりなかったりにしたいの? それどうやって記事にするつもりなの? あったりなかったりで読んでる人は納得するの?」


藤村 「納得したりしなかったりですかね」


吉川 「その無敵のワードみたいにするのやめろよ。間違いではないかもしれないけど何も捕らえてないだろ」


藤村 「この後はホテルに帰ってお風呂に入ったり入らなかったり?」


吉川 「まぁ疲れてるから後回しにするかもしれないですね。悔しいけどそれは、入ったり入らなかったりですよ」


藤村 「なるほど。入ったり入らなかったりですか。ありがとうございました」


吉川 「言わせたかったの? それを言わせたいためにインタビューした? このインタビューの目的なに?」


藤村 「では、これでインタビューを終わったり終わらなかったりします」


吉川 「ちゃんと終わらせて帰れよ! 気持ち悪いよ!」



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る