試験

藤村 「これからお前たちははれて試験に挑む。はっきり言うが試験にまぐれはない。今までの数年間、どうやって過ごしてたかが全て出ると言っていい。だからこそいつも通りやればきちんと力が発揮できるはずだ」


吉川 「はい」


藤村 「この数年間、時間で言うならギャル系でデビューしたセクシー女優がママ系の熟女枠に滑り込むほどの時間だ」


吉川 「あの。18歳未満なので全く言ってることがわかりません」


藤村 「そう! それでいい。そういう今までの態度も全部試験に出るからな?」


吉川 「出ますか? そんなことが試験に」


藤村 「不思議なもので回答を見ればその生徒がどんな風に過ごしてきたかすべてわかる」


吉川 「そういうものですか」


藤村 「基礎をおろそかにしていないなとか、親御さんの言うことを聞いて好き嫌いなく食べてるなとか、FPSでずっと付きまとってレスキルばかりしてくるクソ野郎だなとか全部出る」


吉川 「ゲームのことも?」


藤村 「全部出る」


吉川 「そうなんですか」


藤村 「去年の成績優秀者には思い切って遠くまで足を運べば新しい出会いがあるかも、ラッキーナンバーは5、ラッキー昆虫はクロアゲハ、と出てた」


吉川 「そんな占いみたいな結果が出るんですか?」


藤村 「ラッキーナンバーを多めに書いたおかげで好成績だった」


吉川 「勉強の結果が出たわけじゃないの?」


藤村 「お母さんにボクサーブリーフ買ってきてって言ったのに白ブリーフを買ってきやがって、あのババアぶっ殺してやる! と思ったことも出るから」


吉川 「そんな経験ありませんけど」


藤村 「それは先週俺にあったエピソードだ」


吉川 「先生、お母さんにパンツ買ってきてもらってるの?」


藤村 「キャバクラのお姉ちゃんに下心を見透かされないように、あえておどけて警戒されないように絵文字を多めでLINEしたのをおじさん構文とネットに晒されてまじで死のうかなって思ったことも全部出るからな!」


吉川 「そんな受験生いないでしょ。エピソードが中年っぽすぎる」


藤村 「試験というのは、そう言う風に今までどう過ごしてきたかがわかるようにできてるんだから。だから一夜漬けなんてしても無駄だ。いつも通り寝て万全の体調で挑むこと」


吉川 「わかりました」


藤村 「あと吉川」


吉川 「はい」


藤村 「模試の結果を見たが、お前は間違いなく受かるから。受験票を忘れたり寝坊をしたりそういう変なミスさえ犯さないように気をつけなさい」


吉川 「ありがとうございます!」


藤村 「模試の結果を見れば全部出てたから」


吉川 「あ、なるほど。それなら大丈夫ってことですか?」


藤村 「気を抜いて大きなミスさえしなければ大丈夫だ。と出てる」


吉川 「そんな予言っぽいことが」


藤村 「とにかく気をつけろ。特にちょっとやれそうな感じだしてくるキャバ嬢には気をつけろ」


吉川 「それは先生のエピソードでしょ」


藤村 「まぁ、よっぽどのことがなければ受かるから実力を発揮してこい」


吉川 「はい!」


藤村 「そして合格した後の大学で無理なキャラ作ってサークルで調子に乗ったらヤバい奴がいるって噂になって、結局友達が一人もできないまま大学生活を送ることになるのも出てるけど、とにかく試験は十分注意して挑め」


吉川 「それ出てるんですか?」


藤村 「間違いなく出てる」


吉川 「受けるのやめようかな……」



暗転

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