吉川 「あけましておめでとう」


藤村 「ありがとう」


吉川 「いや、別にお前個人を祝ってるわけじゃないよ。前にも言ってたな、これ」


藤村 「でも今年は祝われて当然なんだよ。なんせ俺、年男」


吉川 「あ、うさぎ年なんだ?」


藤村 「意外と見えないでしょ?」


吉川 「意外とっていうか、別に表層に現れる特徴じゃないから、誰のことも何年生まれっぽいと思ったことはないよ」


藤村 「それよく言われるよ」


吉川 「それってどれ?」


藤村 「意外とうさぎ年っぽくないって見えないですねー、って」


吉川 「構造が複雑な文法使わないで。だったら俺は何年っぽく見えるんだよ?」


藤村 「ただ年男っていうシステムがさぁ」


吉川 「あ、無視……」


藤村 「12年に一度の割にはスペシャル感なくない?」


吉川 「言われてみればそうかな」


藤村 「成人だって昔は20歳、今は18歳か? 全然年男と関係ないポイントで過ぎてる。最初の年男の12歳は3分の2成人式とかやればいいのに」


吉川 「ややこしいな。2分の1成人式だって賛否あるのに」


藤村 「せいぜい60歳の時にちょっとめでたい感じが出るくらいだろ? それまでまったくアニバーサリー感がない。24歳とか36歳はまじでスルーでしょ」


吉川 「昔はあったんじゃないの? 数え年とか使ってた時代。よく知らないけど」


藤村 「もうこっちは11年待ってるわけ。言っておくけど、その11年間、ずーっとうさぎ年を貫いてたんだよ?」


吉川 「普通はそうだろ。貫かない人はいない」


藤村 「別に干支なんて誰も気にしないからさ、こっそりゴリラ年とかに鞍替えしててもおかしくないのに」


吉川 「ないからね、ゴリラ年は」


藤村 「そんなこと言ったら辰年はどうなるんだよ? いないだろ、龍なんて。あいつだけなんかちょっと格好いいし」


吉川 「いないけど干支にはあるから。ゴリラは干支に入れてないから」


藤村 「気にしてるか? 干支のこと? あの人干支が○○っぽいな、って普段から思ってるか?」


吉川 「思ってない。さっきの伏線が回収される問いかけだ」


藤村 「だったらゴリラ年でもいいじゃない。別に誰に迷惑かけるわけでもない」


吉川 「別にいいけどさ。人に言ったら気味悪がられるよ」


藤村 「お前だってパンダ年になっていいんだよ!」


吉川 「なりたくない。パンダ年として生きたくない」


藤村 「12年ぶりだよ? ワールドカップ3回分だよ? よく流星群とか日食とかで何年ぶりですとか言って話題になってるじゃない。12年はそのくらいの話題性があって然るべきだろ」


吉川 「干支って一年間だからさ、なんか薄まるんじゃない? 日食とかは数分だから、その時に集中される感じがする。干支を祝うにしても一年間ずっとめでたさを持続できないでしょ」


藤村 「すごい正論いうじゃない。俺がこんな滅茶苦茶なこと言ってるのに」


吉川 「滅茶苦茶な自覚あったんだ。それも怖いな」


藤村 「ゴリラ年とか言ってる人に真顔で正論言ってくるやつ引くわ」


吉川 「俺がおかしい感じになってるの? 理不尽だな」


藤村 「そういうすぐに白黒つけたがるの、ひょっとしてお前の干支って……」


吉川 「違うよ! パンダ年じゃない!」


藤村 「ホルスタイン年か!?」


吉川 「それは丑年に含まれろよ」



暗転

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